男気を履き違えた中日・松坂大輔の退団理由への違和感
中日の松坂大輔(39)が4日、ナゴヤ球場で加藤宏幸球団代表と会談を持ち、退団の意向を伝えた。中日は大幅年俸ダウンながら来季の契約継続をオファーしていたが、1日に退団した森繁和シニアディレクター、デニー友利結・国際渉外担当の“恩人2人”を引き合いに出して「僕もいちゃいけないな」と残留オファーを蹴った。松坂は球団に対し不信感を抱いていたともされるが、根本的に間違っているのは、この2年間、松坂を雇用したのは、森SDではなく中日球団だということ。そして野球は、2人の恩人のためではなくファンのためにするということだ。そこを理解せず、男気の意味を履き違え昔ながらの“親分子分の仁義”を貫き退団を決めた経緯に違和感が残った。ネット上でも松坂の決断を支持する声は少なく、「理解不能」「本気で野球をしたい気迫が見られない」との批判の声が大勢を占めた。ドラフト1位で入団した西武で最後の花道を飾るのではないか、という見方もあるが、平成の怪物の身の処し方に失望したのは筆者だけだろうか。
恩人2人の退団に「僕もいちゃいけない」
中日の加藤球団代表は「まさかの返答だった」と言う。 この日、松坂と3度目の会談を持ち退団の意思を伝えられたのだ。 「1か月悩んだ」という松坂は、「先日、森さんとデニーさんが退団されました。僕は2人にホークス(ソフトバンク)をクビになった時に声をかけてもらい、ドラゴンズに拾ってもらった。その2人が退団することになったことを聞いて『僕もいちゃいけないな』と思い退団することになりました』と退団理由を説明した。 今オフに7年連続Bクラスの原因を作った“落合派”の一掃を断行した球団は、1日に森SD、デニー友利国際渉外担当の2人にも契約更新を行わない意向を伝えたが、この人事が松坂にショックを与えた。 2017年オフにソフトバンクを退団した松坂に再生のチャンスを与えたのが、西武時代に旧知の森SD(当時監督)とメジャー移籍を通じ親交のあったデニー友利の2人。入団テストという形で年俸1500万円で契約を結び、1年目は、11試合に登板、6勝4敗、防御率3,74でオールスターにも選ばれカムバック賞に輝きオフの契約更改では年俸が1億近くにアップした。 だが、今春の沖縄キャンプでは、サインを求めるファンに手を引かれたことで、肩を痛めて出遅れ、シーズン中には、球団に無断でリハビリ中にゴルフをしていたところを写真週刊誌に撮られペナルティを受けた。ようやく7月16日の阪神戦で1軍復帰、その試合は、5回2失点にまとめたが、7月27日の横浜DeNA戦では、初回に8安打を浴びて8失点。一死しか取れずにゲームを壊して2軍落ちしていた。右肘の違和感もあり、まったく戦力にはならなかった。 球団の編成部は、松坂戦力外の考えを固めていたが、与田監督が残留を強く希望したことから、9月27日の会談で大幅に年俸をダウンさせて出来高をつけて来季も契約を継続するオファーを出した。松坂は返事を保留したが、ここで問題が起きた、 某スポーツ紙が9月30日付けの紙面で「契約延長を打診されていた松坂が受諾の意向を球団に伝えた」と、大誤報を打ったのだ。まだ答えを出していなかった松坂は、すぐさま抗議。それを球団サイドの情報操作だと勘違いして球団にも不信感を抱いた。 球団サイドは、誰一人として、そういう情報操作を行っておらず、そのスポーツ紙の中日担当記者の単なる取材力の無さを露呈したに過ぎない話だったが、そこで松坂と球団の残留交渉にひとつのボタンの掛け違いが起きた。