「情けは人のためならず」は科学的に正しい…見知らぬ他人の幸せを願うことが自分の幸福につながるワケ
■SNSの利用時間が長い人ほどうつになる傾向 スマホで利用されるSNSにも、幸福度を下げる効果があります。 SNSと幸福度の研究は数多くあり、その結果はさまざまながら、総じて言えることは、「やりすぎはよくない」というものです。 たとえば、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのイボンヌ・ケリーらが、若者1万人以上(平均14.3歳)を対象に実施した調査では、SNSの利用時間が長い人ほどうつになる傾向が見られ、特に女性はその傾向が強く出ています。 また、ペンシルバニア大学のメリッサ・G・ハントらの研究では、1日30分程度であれば、孤独感の解消、うつの抑制などの効果があるという結果が出ています。 ハントらは、学生143名を対象に、次の2グループに分けて実験を行いました。 ---------- A フェイスブックやインスタグラム、スナップチャットなどの利用を「1日10分間」に制限される B SNSをいつもどおり、制限なく好きなときに利用できる ---------- すると、グループAの被験者は、グループBに比べて、孤独感やうつ、不安を抑制する効果が見られました。さらには、両グループの被験者に「取り残される」といった不安が解消される傾向が示されています。 ■スマホが手放せないならアプリの利用制限をかける ただし、これだけ見るといいことばかりに見えますが、ハントらも長時間の利用はいい効果をもたらさず、1日30分程度に留めるべきとしています。 つまり、「集中」というハッピーアクションの邪魔になるスマホから離れると、SNSからも遠ざかれるので、ダブルのハッピーアクションになるわけです(それで仕事用PCでSNSを見るようでは本末転倒ですが……)。 とはいえ、SNSのメリットを挙げる研究は他にもありますし、完全に止めたほうがいい、とまでは思いません。 そこでおすすめしたいのが、スマホ制限アプリの利用です。 SNSなど、特定のアプリの利用制限を設定できるので、自分の集中を妨げるSNSやゲームのアプリだけを使えなくすれば、緊急時の電話連絡などは問題なくできます。 「家族や仕事相手と連絡が取れなくなると困るから、物理的なスマホ隔離はできない……」という方にはピッタリです。 そうして、他の用事がないときに30分だけSNSをすれば、SNSのデメリットを回避して、メリットだけを享受できるかもしれません。 そのためには、SNSを決まった時間に決まった時間だけするという日々のルーティンにすると、セルフコントロールがしやすくなります。その時間が来ると強制的に止めるような仕組みにするのです。出勤前の空いた時間だけする、トイレで用を足すときにだけするなど、他の決まった時間で必ず止めざるを得ないルーティンに組み込みましょう。 人間は、意思だけで行動を変えることはなかなかできません。 ですから、そうせざるを得ない状況をつくり出すように、環境や行動パターンを整えていくのです。 ---------- 堀田 秀吾(ほった・しゅうご) 明治大学法学部教授、言語学博士 1968年、熊本県生まれ。シカゴ大学言語学部博士課程修了。ヨーク大学ロースクール修士課程修了・博士課程単位取得満期退学。専門は、司法におけるコミュニケーションの科学的分析。言語学、法学、社会心理学、脳科学などのさまざまな分野を横断した研究を展開している。テレビのコメンテーターのほか、雑誌、WEBなどでも連載を行う。『最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方』(サンクチュアリ出版)、『誰でもできるのにほとんどの人がやっていない 科学の力で元気になる38のコツ』(アスコム)など、著書は50冊を超える。 ----------
明治大学法学部教授、言語学博士 堀田 秀吾