「企業は社会の“器官”である」ドラッカーが指摘する、企業が果たすべき3つの役割とは?
3番目の役割は社会的責任を果たすことです。これも企業が社会的存在である以上自明な役割です。そしてドラッカーは、この社会的責任に対してどう取り組むべきかの基本的な考え方も示してくれています。 ドラッカーが指摘した「3つの役割」の中の3番目の「社会的責任」が近年脚光を浴びてきているわけですが、ドラッカーは50年以上前に次のように述べています。「これら三つの役割はいずれも重要である。(中略)社会の問題について社会的責任を果たすことは、社会が滅びたのちなお存続しうる組織などありえないからである20 」 企業の「3つの役割」について説明しました。先程、「同じ社会を構成する民間企業の目的だけが、組織の中の『利益をあげる』ということでしょうか。そんなことがあるはずがありません」と言いました。では、企業の目的とは何なのでしょうか。 ドラッカーは次のように言います。「企業の目的は、それぞれの企業の外にある。企業は社会の機関であり、その目的は社会にある。企業の目的の定義は一つしかない。それは顧客の創造である21 」 私は、ドラッカーの「顧客の創造」という言葉を初めて聞いたとき、「ドラッカーはなぜ奇を衒(てら)ったような言葉を使うのだろう。『顧客の満足』ではダメなのだろうか」と思いました。世の中には「顧客第一主義」で仕事をしている企業がたくさんあります。 ドラッカーからすれば「顧客の満足」ではダメなのです。なぜなら、社会は生き物だからです。生き物は変化します。そして、この社会がどのように変化していくかはだれにも予測できません。この変化し、変化の先行きがわからない社会の中で企業が生き残っていくには、顧客満足では遅すぎるのです。自らが顧客を創造していかなければならないのです。 また、顧客は自分自身の本当のニーズや欲求がよくわかっていないという面があります。どんな仕事をしていても、企業側の方がたくさんの情報と知識と経験を持っています。顧客が望みもしない、要求もしない、想像さえしない新しい商品やサービスを企業側から提供していかなければならないのです。 企業は顧客にとっての価値を創造し、買わないという選択肢を持つ顧客が喜んで購入してくれる商品やサービスを提供できなければなりません。もし、顧客の購入につながらなければ、民間企業は存続できないのです。 20『マネジメント 課題、責任、実践』P・F・ドラッカー著、上田惇生訳、(ダイヤモンド社)の第4章 21『マネジメント 課題、責任、実践』P・F・ドラッカー著、上田惇生訳、(ダイヤモンド社)の第6章
國貞 克則