「子どもが思いつきそうなアイデアですよね」究極の風力発電「台風発電」…台風を待ち望む日が来るのか
風が強いほど発電能力が高くなる風力発電。いちばん風が強いときはいつだろうと考えたら……
平年よりやや少ない見通しだった今年の台風の発生数予想。しかし、8月12日には台風5号が東北地方を直撃。岩手県では8月の降水量の2倍を超える400㎜以上の総雨量を記録した。また、同16日には台風7号が関東地方に接近し、新幹線は名古屋-東京間が終日運休になり、飛行機も多くの便が欠航となった。 地区によっては気温44度…強烈熱波の中国『公共のモノは自分のモノ』? なんでもアリの「猛暑対策」 各地に甚大な被害をもたらす台風。今、この台風のエネルギーを利用して発電しようという研究が行われている。 「台風の風を利用して発電するなんて、子どもが思いつきそうなアイデアですよね。でも、だれもやろうとしなかったのは、台風のことがよくわからないからです」 こう言うのは、台風科学技術研究センターの台風発電開発ラボでラボ長を務める満行泰河(みつゆき・たいが)准教授。 台風科学技術研究センターとは、台風災害リスクやその脅威の低減、そして台風エネルギーの活用を目指し、’21年に横浜国立大学先端科学高等研究院に設立された組織だ。ここでは、台風観測研究ラボ、台風予測研究ラボなどに分かれ、多角的に台風についての研究がされている。 「風を利用した再生可能エネルギーに風力発電があります。風が強いほど発電能力が高くなる。いちばん風が強いときはいつだろうと考えると、台風。ということで台風発電を考えました。2050年のカーボンニュートラルに向けて開発中です」 今、日本では風力発電の風車は陸上にあり、これからはさらに風が強い洋上に風車を立てる洋上風力発電が進められている。 「でも、風車は動かない。風の強いところに動いていくようになったら、それがいちばんいいんじゃないかと考えて作ったのが、写真の模型です」 ひとつは帆を張って風を受けて進むタイプ。もうひとつは筒状の中にプロペラが入っていて、そこで風を受けて進むタイプ。いずれも進むことでスクリューが回転し、それによって発電するというものだ。 全長200~250mのものであれば、年間20個の台風を5日間追走すると想定した場合、1艇あたり年間33億kWhの電力が作れるという。これは一般家庭での年間電力消費量にすると、約7万7000軒分だ。