ソチ五輪なぜ厳戒? ロシア北カフカス周辺でテロが頻発する4つの理由
2月7日、ロシアのソチで冬季オリンピックが開幕します。しかし、ソチはいま4万人の兵士や警官による、厳重な警備のもとにあります。1月7日からソチに入る車両は地元住民と関係者だけに制限され、五輪の開催期間中は無人機が空から警戒する予定で、さらに周辺ではミサイル迎撃システムも配備されています。「平和の祭典」であるはずの五輪が、これほどの警戒体制のもとで行われる背景には、ロシアがイスラム過激派のテロに直面していることがあります。【国際政治学者・六辻彰二】
独立派を鎮圧した当時のプーチン首相
ソチに近いロシア南部の主要都市ボルゴグラードでは、テロ事件が相次いでいます。2013年10月、路線バスが自爆テロで爆破され、乗客6名が死亡。さらに12月29日にはボルゴグラード駅舎が、30日にはトロリーバスが、いずれも自爆テロで破壊され、それぞれ18名、16名の死者を出す惨事となりました。 一連のテロ事件に犯行声明は出されていませんが、北カフカス(コーカサス)を拠点とするイスラム過激派グループか、それに近い人間による犯行という見方が有力です。 ロシア南部の北カフカス地方は、イスラム教徒が多い地域です。1990年代の初めから、この地方にあるチェチェンでは、独立を求める民族主義者がロシア軍と衝突を繰り返すようになりました。その鎮圧にあたったのが、現在大統領のプーチン氏でした。1999年8月に首相に就任したプーチン氏は、戦闘機すら派遣してチェチェン独立派を鎮圧し、その功績が認められ、同年12月に初めて大統領に就任したのです。
過激なイスラム思想が流入した最貧地域
しかし、2000年代に入る頃までほぼチェチェンに限られていたテロ活動は、2000年代の半ば頃からダゲスタンやイングーシなど北カフカス一帯だけでなく、首都モスクワにまで広がりをみせています。 2007年10月には、戦闘のなかで勢力を大きくした武装勢力「カフカス首長国」がチェチェンを含む北カフカス一帯で、イスラム国家として「独立」することを宣言。「カフカス首長国」は国際テロ組織アル・カイダとの結びつきも指摘されており、2010年3月のモスクワ地下鉄爆破自爆テロなどで犯行声明を出しています。