不眠不休で帰ってきても、足を延ばせる風呂がない…令和の若者がそっぽを向く自衛隊官舎“老朽化” 「石破総理」も認識、しかし建て替えが進まない理由
しかも、風呂場の洗い場に洗濯機が鎮座する異様な光景に驚かされる。洗い場に洗濯機があるために、座って体を洗うことも難しいだろう(写真〈1〉)。
なぜ、お風呂の洗い場に洗濯機があるのか? 洗濯機を置くための給排水と電源のある場所が他にないからだ。 洗濯機用の排水口がこの官舎にはない。洗面台とトイレ、台所のシンクと風呂場のどこで洗濯後の排水を流すかを検討して、風呂場を選ぶしかなかったのだ。洗面台をどけて洗濯機の設置工事は可能だが、退去時に元の状態に戻すことが義務付けられている。その費用も自己負担しなければならないため、隊員は仕方なく我慢して生活をしているのだ。 だが、お風呂の洗い場に洗濯機を置くと漏電のリスクがある。特に浴室内の洗濯機を使用しながらの入浴は、感電事故にも繋がりかねない。「事に臨んでは危険を顧みず」と自衛隊員は宣誓をするが、こんなところで、危険を顧みずに生活する必要はまったくない。
緊急参集要員住宅
「古い部屋に住みたくないなら、自分で家賃をだして好きな家に住めばいいじゃないか?」という意見が出るかもしれないが、この隊員は「緊急参集要員」に指定されており命令で、この「緊急参集要員住宅」に居住させられている。ここに居住する義務があるから仕方なく住んでいるのだ。彼の家族は別の一般的なクオリティの賃貸住宅に住み、彼は家賃を支払っている。でも、この家族の家に居住することは命令違反になるのだ。 緊急参集要員とは何か? 重要な職務に携わる自衛隊員の中にはその拠点から2キロメートル以内の無料官舎に居住し、有事や災害等の緊急時に直ちに帰隊しなければならない義務を課せられた隊員のことをさす。 パイロットや搭乗員、艦長や機関長などの重要な乗組員、指揮官等の幹部自衛官等が緊急参集要員となる。法令で交通インフラや通信手段が遮断されても、迅速に職域に登庁する義務がある。家族の家で一緒に食事をするたびに、このような緊急参集要員住宅に帰宅しなければならないのが嫌でしかたないという。緊急参集要員住宅には新築の住宅も多いが、この例の無償供与住宅は、もともと賃料が取れるようなクオリティではない。