陸の孤島救ったドローン、断水予測するAI…能登地震機に注目される防災テクノロジー
全国約6千件の水道管の腐食調査データと、過去の地震をもとにした被害予測の2種類のAIを活用して導き出す。これにより断水リスクが高いエリアを特定し、優先して耐震化などの工事が可能になる。今年春ごろから全国の自治体向けに提供を開始する予定。
断水時の対策としてはベンチャー、WOTA(東京)の水循環型シャワーが被災地で活躍した。フィルターでの濾過(ろか)や除菌をAIで制御することで約98%の水が再利用可能となり、断水エリアに約100台が提供された。担当者は「今後想定される『国難級災害』では、能登の50~100倍規模の断水人口が発生すると予測されている。この規模に対応できるよう全国に配備を進めたい」と意気込む。
■スターリンク活用も費用ネック
能登半島地震と阪神大震災の大きな違いの一つとして、スマートフォンの普及がある。即座に情報にアクセスできるようになった一方で、大規模な地震発生時には回線が不通になる課題がある。
能登地震ではケーブルの切断などが原因で、NTTドコモで最大70%、KDDIで54%、ソフトバンクで45%のエリアの通信に支障が出た。災害情報の収集をスマホに依存する人は増えており、救助の要請にも通信回線は欠かせない。
道路が寸断された中での応急復旧手段として、ソフトバンクは長時間の連続飛行が可能な有線ドローンに無線中継装置を搭載して一部エリアの通信を確保。NTTドコモやKDDIは船上基地局を設置して一部の通信を回復させた。
船上基地局を含め、市役所や避難所の通信確保で使われたのが米宇宙企業スペースXの衛星通信網「スターリンク」だ。衛星通信なら地震によるケーブルの断線リスクがない。ただ、コストという別の問題がある。
石川県穴水町役場では防災無線を全戸配布し、災害時の情報伝達の手段として活用していたが、能登地震では停電の影響で防災無線が送信できない問題が起きた。このため令和6年8月からスターリンクを導入。避難所など複数拠点への設置を目指すものの、予算の問題で実現できていない。