災害時の「無事」を布で伝える取り組み進む…要救助者の捜索を効率的に
大規模災害時の救助活動を迅速に行うことを目指し、和歌山市の複数の地域で、世帯全員が無事だった場合には家の玄関などに布を結びつける取り組みが進められている。救助にあたる消防隊員らに布を通じて「無事」だと伝えることで、他の要救助者の捜索や救助を効率的に進める狙い。市は取り組みを全域に広げたい考えだ。(古賀愛子) 【地図】和歌山県
高松地区で11月23日、マグニチュード8・5の南海トラフ地震が発生したという想定で防災訓練が行われた。住民たちは、それぞれの自宅の玄関付近に黄色い布を結び付けてから、訓練場所の小学校へ向かった。
訓練に先立ち、同地区では幅5センチ、長さ70センチの黄色い布を約3400世帯に配布。この日の訓練で初めて使用した。同地区防災会の石井太郎会長は「今日をスタートにして、住民にどんどん広めていきたい」と話した。
災害発生から72時間が経過すると、被災者の生存率は急激に下がるとされる。救助活動は素早さが求められる。このため、無事だった住民自身が布を玄関などに示せば、救助にあたる消防隊員や警察官らは「捜索の必要のない建物だ」といち早く認識でき、他の要救助者を捜し出すことができる。
同様の取り組みは、全国的にも広がっている。
静岡県富士宮市は2008年から実施。「わが家は大丈夫!黄色いハンカチ作戦」と銘打ち、市内で震度5強以上の地震が起きた場合、無事ならハンカチを玄関先など外から見えやすい場所に示すルールを設けている。
県内でも有田川町で黄色の旗を掲げる取り組みをしている。11年の東日本大震災後から取り入れたという。
和歌山市内では、すでに一部の地区でタオルや黄色い布などを使った取り組みを進めている。市はさらに全域へと広げたい考えだ。自主防災組織ごとに表示物の素材や色、掲げる場所のほか、どのような規模の災害時に掲げるかという基準を協議してもらう方針という。
尾花正啓市長は11月7日の定例記者会見で「一分一秒を争う命を助けようという取り組み。市として全域で推奨していきたい」と話した。