地元に根付いたJクラブ「来ている方に品がある」 “地域密着”を代表OB称賛「人口の割に凄い」【見解】
【専門家の目|栗原勇蔵】アルビレックス新潟というクラブの在り方を称賛
松橋力蔵監督の率いるアルビレックス新潟は、今シーズンのルヴァンカップでクラブ史上初の決勝進出を果たした。決勝ではPK戦の末に名古屋グランパスに敗れたが、国立競技場に詰めかけた大勢のサポーター、低い位置からGKも使って果敢にパスをつなごうとするスタイルを貫いた点などは、あらためて高く評価された。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部) 【実際の映像】「来ている方に品がある」新潟サポーターの音割れチャント ◇ ◇ ◇ 初のタイトル獲得にあと一歩のところまで迫った新潟について、元日本代表DFの栗原勇蔵氏は現役時代に「ファミリーも多いし、(試合を見に)来ている方たちに品があり、熱い応援をしていたなという感じはすごく受けていました。浦和みたいに熱くて男臭いところもあれば、新潟みたいに品もあるけど熱いサポーターもいるという感じですね。個人的にも新潟は、ご飯も美味しいし、アウェーで試合に行くのが楽しみなチームでした」という印象を持っていたという。 また、今回のルヴァン杯決勝ではスタメン全選手が日本人選手で、MF小見洋太や東洋大所属で来季正式加入のDF稲村隼翔ら、若い選手たちの活躍が光ったが、『補強上手なクラブ』という印象も以前から強いという。「基本的に外国籍選手がすごく当たるというか、いい選手を取ってくるイメージ。それが浦和に行ったりとか、うまくやっている印象はすごくありますね」と、過去にFWエジミウソン、MFマルシオ・リシャルデス、MFラファエル・シルバといった浦和に移籍した選手をはじめ、FWペドロ・ジュニオールや、MFレオ・シルバのように他のJクラブでも活躍する外国籍選手を補強していたチームの印象を語った。 だが、自身の新潟にまつわる思い出は、決して明るいものだけではないようだ。最も印象深い新潟とのエピソードを聞くと、「新潟に行っての試合ではありませんが、2013年に優勝にリーチがかかっていた時に、ラスト2試合のところで新潟に勝てば優勝という試合を迎えました。当時の新潟にはFW川又(堅碁)とかがいたチームだったのですが、そこで負けて優勝できなかったんです。それが一番、印象に残っていますね」と、苦笑いする。 それでも新潟がJリーグの理念に沿ったチームであり、クラブを率いている松橋氏が横浜FMのOBということもあって、多少の思い入れを持って決勝を見ていたと明かした。 「もともとJリーグは、『地域密着でやりましょう』というところから始まっています。そういう意味では新潟はもう長く頑張っているクラブ。人口の割には人数がすごく、いつも入場者数も入っています。確かにJ2に落ちたこともありますが、J1にいる期間も長い。ただ、そんな中で優勝に手が届いたことはなくて、今回(勝てば初の)タイトルというところでした。監督もマリノス(出身)の方なので、応援してたところもあるし、ああいうところが優勝すると、また盛り上がったりもするのかな、なんて思って見ていました」 「対戦相手の名古屋がどうこうではなく、それはJリーグを作った当時の思いが叶う瞬間でもあったと思います。地域密着、地域の人たちが支えるクラブという意味では、新潟はすごく分かりやすいクラブですから。本当に惜しかった。でも、逆にあと1歩というところで目標も明確になったと思うし、今後もタイトル目指して頑張ってほしいなとは思います。サポーターの方もすごく熱いし温かい印象があるので」 今後の新潟の初タイトル獲得に期待を寄せた栗原氏。決勝進出を果たしたことは、普段、新潟のサッカーを見ていない人たちにとっても、改めて新潟というチームのことを意識させる大きなポイントとなったと言えそうだ。 [プロフィール] 栗原勇蔵(くりはら・ゆうぞう)/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。
FOOTBALL ZONE編集部