咲妃みゆインタビュー「グラウンドホッグ・デー」を通して考える“生きる”ということ
タイムリープものの傑作映画「恋はデジャ・ブ」を舞台化し、オリヴィエ賞2部門に輝いたミュージカル「グラウンドホッグ・デー」。この話題作が、福田雄一演出、桐山照史(WEST.)主演で日本初演を迎える。祭りの1日を永遠に繰り返すことになった天気予報士のフィル(桐山)。そのフィルと心を通わせていくヒロイン・リタを演じるのが、2024年第31回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞するなど躍進の続く咲妃みゆだ。新たな挑戦を前に、今の思いを聞いた。 ──本作に初めて触れた時の印象を聞かせてください。 「現実世界ではあり得ない話なんですけど…でも、“ありそうで、ない”みたいな(笑)、すごく絶妙な作品だなと思いました。もしも1日をやり直せるとしたらどうするだろう…と多くの方が一度は考えたことがあるのではないでしょうか。そういう意味でも、皆さまにきっとお楽しみいただけるのではと思っています」 ──咲妃さんはグラウンドホッグ・デーという祭りの中継のために町を訪れたテレビ番組のアソシエイト・プロデューサー、リタを演じます。主人公のフィル以外は、同じ1日を繰り返していることに気付いていない。でも日を繰り返すごとに、関係性は変化していく…というのが、面白いところですね。 「はい。フィルさんが1日を繰り返すことによって小さな変化がたくさん生まれていきますが、彼以外の登場人物はその変化を知る由もなく、1日限りの毎日を生きている。その様子を、お客さまは事情を知った上でご覧になる…というのが、すごく面白い構造だと思います。きっとさまざまなシーンでお客さまのリアクションが届いてくると思うので、そちらに意識を持っていかれないようにしないと。これはもう、修行ですね(笑)」
──初共演となる桐山さんの印象はいかがですか? 「初めてお会いした瞬間から、とても気さくにお話をしてくださって、そうした桐山さんの空気感がこの作品に明るい風を吹かせてくださるんだろうな、なんて心強い座長さんなんだろうと感じました。いつかご縁があったらなと思っていた…あえてこう呼ばせていただきますが、“俳優さん”なので、お芝居要素が盛りだくさんなこの作品でご一緒できるのはとても光栄です」 ──演出の福田さんの印象はいかがでしょう。 「福田さんの作品は舞台も映像も何作か拝見していて、ミュージカル『ブロードウェイと銃弾』は初演(18年)も再演(21年)も観劇しています。福田さんの稽古場は役者にとっていろいろな試練が待ち受けているといううわさも耳にしますが(笑)、先入観なく飛び込んでいきたいなと。“コメディーと言えば福田さん”とよく言われますが、作品が持つメッセージは逃さない方という印象があって。この作品においても、楽しさだけでなく、作品が伝えたいテーマもしっかりお届けできる道を導き出してくださる気がしていて、とても楽しみです」 ──咲妃さんが感じる、この作品の深みや魅力は何ですか? 「同じ1日を繰り返せることが、果たしていいことなのか。どんな日が待っているのか分からないというドキドキが、実はその人の人生を豊かにするんじゃないか。自分に光を与えてくれる存在は何か、逆に自分は誰に光を当てられるのか…そういったところまで考えを広げてくれる作品だと思います。笑いつつ、“生きる”ということについて一緒に考えていただけたらなと思います」 ──「やり直せることがいいことかは分からない」という発言の後に恐縮ですが、咲妃さんはもし時間を巻き戻して人生をやり直せるとしたら、いつから巻き戻したいですか? 「宝塚歌劇団に入る前、まだ宮崎で暮らしていた頃に戻りたいかな。今、離れている時間が長ければ長いほど、家族の存在のありがたさを実感するので、あの頃に戻って目いっぱい親孝行したい。一緒にいるのが当たり前だと思っていた頃の自分に、“そうじゃないんだよ”ということに気付いた33歳の私が憑依して…急に風呂洗いや皿洗いを自分から始めたら、両親はビックリするでしょうけど(笑)」