イスラエル系船主の自動車船「GALAXY LEADER」が紅海で拘束。日本郵船が用船。親イラン武装組織フーシが犯行声明
日本郵船は20日、同社が英国船主ギャラクシー・マリタイムから用船(チャーター)する自動車船「GALAXY LEADER」(バハマ船籍、2002年竣工、約5000台積み)がインドに向けて航海中の現地時間19日昼(日本時間同日夜)、紅海南部イエメン・ホデイダ沖で拿捕(だほ)されたと発表した。イエメンの親イラン武装組織フーシが同日、SNS(交流サイト)を通じて犯行声明を発表している。同船主は、イスラエル系英国船主レイ・カーキャリアーズ・グループに属しているとみられる。 日本郵船は20日午前8時30分に本店内に対策本部を立ち上げ、「用船者として乗組員25人の安全を第一に対応している」と説明している。日本郵船によると、乗組員25人に日本人船員は含まれていない。イスラエル首相府によると、船員はウクライナ、ブルガリア、フィリピン、メキシコ出身者で構成されている。また、本船に貨物は積載されていない。 英国の船価鑑定大手ベッセルズ・バリュー(VV)によると、船舶管理会社はギリシャのスタムコ・シップマネジメント。 レイ・カーキャリアーズは、イスラエル人実業家のウンガー家が創業し、VVによると、自動車船約60隻を保有。船舶管理会社スタムコは、レイ保有船を主体に管理業務を展開している。 海運業界では、事故や座礁が発生した場合、船舶を保有する船主が一義的に法的責任を負う。日本郵船は用船者の立場であり、本船そのものの船員配乗、本船自体の所有者ではない。このため、乗組員の配乗はイスラエル系英国船主が指定した船舶管理会社が行っている。 武装組織フーシは19日夜、SNSのX(旧ツイッター)を通じ、「紅海でイスラエル関係船を拘束し、イエメン沿岸に移動させた。同船の乗組員はイスラム教の原則に従って対処される」との声明を発表した。 日本の海運業界は自動車船だけでなく、タンカー、LNG(液化天然ガス)船、ドライバルク船など全世界の航路に配船している。 イスラエルだけでなく、ロシアのウクライナ侵攻以降、「常に地政学的リスクを考慮に入れながら船舶を運航している」(海運首脳)。 ただ、海運大手は1社あたり500―800隻弱の巨大な運航船隊を抱える。海外船社の運航船も最近、ウクライナの穀物輸送途中、黒海で被弾するなど、地政学的リスクをゼロにすることは難しい。パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍とイスラム組織ハマスの交戦が続く中、海運会社の中東への配船リスクが高まりつつある。
日本海事新聞社