パンツ1枚で、寒くて湿った「懲罰房」に収容される…ナワリヌイが書き残した「ロシアの刑務所」の驚きの実態
民主化の火は消えない
2022年11月17日 当初、この収容所に来て間もなく、親族との長期面会がある予定だった。だが彼らはそれを許可せず、4ヵ月待てと言った。だから私は待った。そして面会の3日前、シゾに移送されると聞かされた。そこでは面会は6ヵ月に一度だったので、私は再び待った。 母と父はもう荷物をまとめていた。子供たちも来る予定だった。ユリアも。ところがその4日前、私はシゾに送られることが決まった。そこでは面会は許されていない。 そんなわけで、私にはもはや面会がない。管理局は上を満足させることができて、さぞかし大喜びだろう。なるほど、これを哲学的に捉えてみよう。奴らがこんなことをするのは、私を黙らせるためだ。それなら私がまずやるべきことは? そう、怖じ気づかず、黙らないことだ。 2023年8月、過激派組織を設立した罪で新たに禁錮19年の刑を言い渡されたナワリヌイは、やがて北極圏の刑務所へと移送される。当局が彼を釈放するつもりがないのは明らかであり、事実上の終身刑だったが、それでも彼は過酷な環境に耐えながら民主化に向けて声を上げ続けた。 2024年2月16日、ロシア当局はナワリヌイが死亡したと発表。「散歩後に気分が悪くなり死亡、死因は調査中」と明かしたが、当局の手で再びノビチョクと同種の毒を盛られ、殺されたと見られる。 反体制派のリーダーが消えたことで、プーチンは胸を撫で下ろしているだろう。しかし夫の死後、ユリアはYouTubeの動画でこう語った。 「彼の多大な犠牲は無駄にならない。戦ってください。そして諦めないでください。私は恐れていません。あなたは何も恐れることはありません」 ナワリヌイの死後も、彼が灯した民主化の火は燃え続けている。 「週刊現代」2024年11月9日号より
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