あなたは先祖代々の墓を“処分”できるか? 関心高まる「墓じまい」とは
誰にでもいつかは訪れる人生のエンディングをより良いものにしようという考えのもと、高齢者を中心に関心が高まっている「終活」。自分の生い立ちや残る家族に伝えておく情報をまとめたエンディングノートを書いたり、お葬式の準備や遺影撮影をしたり、財産処分や相続の準備をしたりなど、その内容は多岐に渡っています。その中、注目を集めているのが、お墓を建てるのではなく、先祖代々受け継いできたお墓を処分するという「墓じまい」。その背景にはどのような意図や課題があるのでしょうか。NPO法人終活サポートセンターが主催した終活イベント「終活大学」の会場で取材しました。
“お墓が見捨てられる”~ 地方で増加する無縁墓
「墓じまい」に注目が集まっている背景には、過疎化が進む地方を中心に「無縁墓(むえんぼ)」が増加しているという課題が挙げられるといいます。無縁墓とは、何年もの間に渡ってお墓の維持管理料が墓地やお寺などに支払われず、そしてお墓に眠る故人に縁のある人に一切連絡が取れなくなってしまったお墓のこと。墓地に放置されてしまったお墓です。長期間放置されたこうした無縁墓は最終的には処分されて、遺骨は無縁仏として合葬。その跡地は更地化されるのですが、増加する無縁墓への対応に地方自治体も苦慮しているのだそうです。 加えて、この無縁墓の問題は地方だけに留まらないといいます。青山霊園や多磨霊園など都内の大規模な公営霊園でも、身寄りのない無縁墓は無数に存在しているほか、第一生命経済研究所が行ったアンケート調査でも、50代以上の半数以上の人が「自分のお墓は、いつか無縁墓になる」と考えているのだそうです。 「終活大学」の会場で、こうした「墓じまい」をテーマにしたプレゼンテーションを行った、墓石販売などを手掛ける「まごころ価格ドットコム」代表の石井 靖さんは、「こうした動きの背景には、人口構造の変化(少子高齢化)によってお墓を引き継ぐ人が減少していることが考えられる。今の出生率を踏まえると、家を継ぐ直系の男子は1人に満たない。お墓が無縁になる可能性は誰にでもあり、実は今のお墓を将来どうするのかという課題はすぐそこに迫っている」とこの課題の深刻さを説明。終活をしている高齢者の中には、「残される子どもにお墓のことで負担を掛けたくない。いつか無縁墓になるのならば、今のうちに適切に処分したい」という思いから墓じまいをしようとする人も増えているのだといいます。 同社では、この墓じまいに関する手続きの代行、墓石の撤去と処分、遺骨の移転先の紹介などを行うサービスを4月から開始しているそうですが、墓じまいに関する問い合わせや相談はサービス開始以前から多く寄せられていたのだそうです。