「プレミア12」侍J選出ゼロだった阪神、ロッテ勢から東京五輪代表は出てくるのか?
「今大会で日本の投手陣にはスピード、コントロール、落ちるボールの3つを高いレベルで兼ね備えた投手が揃っていた。高橋にはコントロールの面で来季どれだけ成長するかの課題は残るが、スピード、落ちるボールの条件は満たしている。投手枠を11人にするのか、12人にするのかわからないが、左の中継ぎ候補として田口、中川、大野雄大(中日)らと争いたい。ただ先発には千賀、菅野、中継ぎでは松井裕が加わってくるだろうから、来季の4、5、6月によほどの結果を残させねばならないでしょう」 投手陣では今回、辞退した国際経験も豊富な千賀滉大(ソフトバンク)、菅野智之(巨人)、松井裕樹(楽天)らが有力候補として加わってくる。枠が減りさらにライバルが増えるので高橋が食い込むには厳しい競争があることは確かだ。 掛布氏は野手にはさらに厳しい壁があると見ている。 「今大会で浮き彫りになったのは短期決戦で野手が不振になった場合にどうするかという部分。複数ポジションを守れる選手が優先されるでしょう。外崎はもちろん、山田、浅村は、二塁、一塁、DHと幅広く使える。国際試合では、1点を競い、1点を守りきる野球が勝敗をわけることが改めて確認された。そうなるとセンターラインの強化が基本となり、守りも含めて遊撃の坂本、源田壮亮(西武)は必要な選手。センターには柳田悠岐(ソフトバンク)が入ってくるでしょう。ただ三塁だけはウイークポイント。そこに大山の可能性が出てくる。また“打てる捕手”を重要視するのなら梅野も候補。周東のような足のスペシャリストが必要であることもわかった。近本は、その枠の争いに参加したい」 今大会では、松田が不振。稲葉監督は「マッチを呼んで本当に良かった」と振り返るほど、スタメンを外れてもチームを結束させるリーダーとして大きな力を見せたが、戦力とすれば物足りない。 三塁候補としては、巨人の岡本和真、ヤクルトの村上宗隆の若手の大砲2人もいるが、守備力では勝る大山が来季4、5、6月に今大会の鈴木のような驚くほどの大爆発をすれば、「なきにしもあらず」というのが掛布氏の見立てだ。春のメキシコ戦との強化試合では侍ジャパンのメンバー入りした。 捕手は3人制か、2人制かわからないが、北京五輪では阿部慎之助氏、里崎智也氏、阪神の矢野燿大監督の3人制が採用された。 もし3人制となるなら梅野にも可能性が出てくる。抜群のリードを見せた経験豊富な曾澤と“キャノン”甲斐拓也(ソフトバンク)は動かせないだろう。特に千賀が入るとなると“お化けフォーク”を難なく捕れる捕手として甲斐は外せなくなる。だが、打力は物足りない。 今回、3人目に小林誠司(巨人)が選ばれた理由には、巨人から4人の投手が選ばれたことともリンクしていたようだ。もし「打てる捕手」が、選考の重要チェック項目になるのなら西武の森友哉と共に梅野がリストアップされてもおかしくない。加えて梅野には肩も、落ちるボールへのブロッキング技術もある。 国際経験のない近本が五輪のプレッシャーの中で走れるかどうか微妙だが、候補として名前を挙げるなら高橋、大山、梅野、近本くらいしかいないのも阪神の現状なのだ。 ロッテは、国際試合で必須の「落ちるボール」の条件を満たす種市篤暉、守護神としてリーグ4位の27セーブを挙げた益田、今季怪我などもあって100試合出場(打率.243、3本、31打点)に留まったが国際試合経験のある捕手の田村の3人が候補だろう。 故・星野仙一氏が指揮を執った北京五輪では阪神からは藤川球児、矢野監督、新井貴浩氏の3人が選ばれ、ロッテからも里崎、成瀬善久、西岡剛の3人が選ばれていた。中日から4人も選びながら、広島、オリックスからは選出ゼロの偏った選考はメダルが取れなかったこともあってのちに批判を受けた。だが、選手選出は最終的に稲葉監督の好みになって当然で、結果がすべてなのだ。 おそらく東京五輪の最終的なメンバー発表は、7月上旬に行われるだろう。来年の開幕からの成績、調子が加味され今回のメンバーでも極度の不調に陥った選手や故障した選手は外され、逆に絶好調をアピールする選手が新たに選ばれる可能性もある。阪神、ロッテ勢が稲葉監督に目をつけてもらうには、開幕から選ばざるを得ないほどの内容を伴った結果を突きつけるしかない。