特別インタビュー|「文字通り2シーターのF1マシン」鬼才ニューウェイが語る、レッドブルで最後の“アート作品”RB17
グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードが今年も開幕。グッドウッドの丘を往年の名車から最新車までが駆け上がるこの伝統のイベントでついに公開され、世界的な注目を集めているのが、レッドブルの市販ハイパーカーRB17だ。 【動画】レッドブル、市販ハイパーカーRB17を公開。その性能はF1マシンと同等? 手掛けたのは、“空力の鬼才”というふたつ名を持つ伝説的なレーシングカーデザイナー、エイドリアン・ニューウェイ。レッドブルで携わる最後のプロジェクトとなったこのRB17について、motorsport.comに語った。 「文字通り、2シーターのF1マシンだ」 ニューウェイがそう表現するRB17は、彼を柱にレッドブル・アドバンスド・テクノロジー(RBAT)が約4年の歳月をかけて制作した、レッドブルの叡智が詰まった1台だ。 RB17は最高出力1000馬力の4.5リッター自然吸気V10エンジンを搭載し、価格は500万ポンド(約10億円)。しかも製造台数は50台のみだ。このスペシャルなマシンには目には見えづらい、感情的な要素がある。 まず、レッドブルは来年3月にニューウェイがチームを去る前に、2025年シーズン用のF1マシンを発表することになるが、RB17はニューウェイのビジョンが真に込められたレッドブルで最後のマシンとなる。 他チームのカラーに身を包んだニューウェイを見るのは奇妙なことだ。しかしウイリアムズのブルーやマクラーレンのシルバーからチームウェアを着替えた姿にいつの間にか見慣れていたことを考えれば、それは時間の問題だろう。 また、RB17という名称はレッドブルのF1マシンの“欠番”を埋めることになる。2020年のRB16は、COVID-19の世界的蔓延によるレギュレーション調整で翌年にキャリーオーバーとなり、多少の変更を受けRB16Bとして2021年のF1を戦った。そしてグラウンドエフェクトレギュレーション導入初年度となる2022年に、レッドブルはRB18という名前を持つマシンを投入した。 RB17という名前は、順番という面でもぴったりと当てはまる。というのも2020年のクリスマス時期はロックダウン期間により、ニューウェイはスキーに行くことも、妻の実家である南アフリカを訪れることもできず、グッドウッドで公開されたこの市販ハイパーカーの設計に取り掛かったのだ。ちょうどRB16Bが完成する前のことだった。 ただ、ニューウェイがRB17のコンセプトを最初に考えついたのは、さらに過去を遡る。 「(以前ニューウェイが携わったアストンマーティンの)ヴァルキリー・プロジェクトは、リサーチとデザインという点で私の観点から言うと、2017年頃には完了していたようなモノだった」 レッドブルのF1ファクトリーで行なわれた独占インタビューで、ニューウェイはmotorsport.comにそう語った。 「その後、2020年までの数年間、私は『よし、次はどうしよう?』と考え始めた。頭の中で様々なアイデアを巡らせ、断片的なことを書き留めた。そして私はキャリアを通じて、ヒストリックカーからF1マシンまで、サーキットで多種多様なマシンをドライブする幸運に恵まれていると考え、コンセプトを思いついたのだ」 「ヒストリックカーを運転するのはとても楽しいが、F1マシンのドライブで沸き起こるアドレナリンとスピードは息を呑むほどだ。だから『(F1のスピードを)出せるようなクルマをデザインできないか』と考え始めたのだ」 「これはふたり乗りだから、パートナーや友人、あるいはコーチと一緒に楽しむことができ、F1マシンのラップタイムを刻むことができる。同時に、様々なレベルの人が扱える。サーキットでの経験が比較的浅い人が、初めてのサーキットで走るのは賢明ではないかもしれないがね」 「とにかく、2020年から2021年にかけてのクリスマスに、私はそういったことを実現するための最初の図面を描き始めた。そして2021年1月にその図面を(RBATの)みんなに見せたのだ」 「その後、今年の1月にコンセプトの段階を終えた。つまり我々は3年間、コンセプトを詳細に検討し、進化させ、今言った目標を達成しようとした」