吉沢亮の面白CMのウラに東北復興への思い…「いったい何屋さん?」アイリスオーヤマがお米に手を出した背景
■家電への参入もリーマンショック後の「もったいない」精神から
精米事業に参入することで、被災地の新たな雇用にも繋がった。同じ被災者として復興を願う熱量はもちろん強かっただろうが、支援一辺倒だけではない経済循環を作り、さらに雇用も創出するという合理的な動きは、ある意味で同社らしいとも思える。 よく知られている話だが、このような事例は過去にもあった。もともとプラスチックを製造・販売する町工場からスタートし、園芸用品、ペット用品と商品を展開してきた同社が、いま最も知られる家電事業に参入したのも、技術者の雇用・活躍の場の創出が根底にあったのだ。 「当時、リーマンショックの影響で、大手家電メーカーを早期退職した技術開発者が外国のメーカーに流出してしまうことが社会問題になりました。日本の高い技術が海外へ流出するのはもったいないということで、弊社に入社していただき、彼らの知見を生かして家電を開発したのが始まりでした」 社会問題を解決しながら事業成長する。このシンプルな循環をためらいなく実施できるのが、アイリスオーヤマという会社の強みのように思える。 ■苦労もあった精米事業、声高に「復興支援」を打ち出さなかった理由は? 現在では、家電、食品、ホーム用品、園芸・ペット用品、ヘルスケア事業等のほか、法人向け商品など約25,000点もの商品を展開。2013年に参入した精米事業は、生鮮米、もち、パックごはんに加え、災害を経験したからこその非常食“アルファ化米”も展開し、2023年の食品事業は前年比121%と好調で、さまざまな事業を有する同社の中でも大きな柱に成長したという。生産者からは、今も多くの「ありがとう」の声が届いているそうだ。 ちなみに、吉沢亮のお米CMは生産者側からも大好評だそうだ。背景にあるドラマを知ると、もっと復興支援を打ち出した感動的な作りにしたほうが社のイメージアップにつながったのでは…と思うのだが。 「個食化も背景にはありましたし、若者を中心に幅広い世代にパックごはんに関心をもってもらい、お米の消費につながればという狙いが一番でしたから。復興支援を前面に出すより、むしろ『ユニークだなー』と思ってもらったほうが心に留まり、広く伝わるのではないかと思いました」