勤務時間を減らしたのに社員がどんどん辞めていく…優秀社員が愛想をつかす"ダメな会社"の残念な共通点
■パワハラにならない「承認サンドイッチ」 【澤円】話をリーダー起点に戻すと、いまは一歩間違えたらすぐにパワハラといわれるといった不安を抱えているために、「チームメンバーをうまく叱れない」と悩んでいるリーダーもたくさんいます。対話のなかでチームメンバーにネガティブな話をしなければならない場面ではどのような工夫をすればいいでしょう。 【越川慎司】わたしが「承認サンドイッチ」と呼んでいる指導方法がおすすめです。いきなりダメ出しをしてしまうと、相手も身構えてしまい受け入れてくれません。ですから、その前にまずは承認をするのです。 ミーティングに遅れてきた若手の部下がいい発言をしたのなら、まず「あれはいい発言だったね」と褒めてあげて承認します。次に遅刻について指摘するわけですが、「遅刻してこなければ『もっといいよ』」といういい方にしたうえで、「次からは気をつけられるよね。いつも頑張ってくれて『ありがとう』」とさらに承認をするのです。 この承認サンドイッチなら、ネガティブな指摘も若手社員が受け入れやすいことがわたしたちの調査でもわかっています。 ■リーダーから進んで「自己開示」をする 【澤円】マネージャー層としては、チームメンバーのご機嫌を取っておけばいいというわけでもないし、もちろん「とにかくいうことを聞け」という昭和のスタイルで厳しくすればいいというわけでもありません。バランス感覚が重要ですよね。 【越川慎司】人手不足が大きな問題になっていることもあり、離職率を下げるために、従業員の働きがいを高めることが重要であることは間違いありません。ですから、リーダーとしては、働く人にとっての働きがいとはなにかを理解することからはじめましょう。そのためにもまず、自らの働きがいはなにかと考えてみてほしいのです。 そのうえで、「ボーナスが出たあとに家族と食事に行くのがわたしの働きがいなのだけど、みんなはどう?」というようにメンバーに聞いてみましょう。そのように自己開示をすると、89%のメンバーが自らの働きがいについて考え、そのことを明かしてくれるというデータもあります。チームメンバーの働きがいについて知ることができるのですから、それらを高めてあげる方法を考えやすくなっていくことでしょう。 ---------- 越川 慎司(こしかわ・しんじ) 株式会社クロスリバー代表 元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。 ---------- ---------- 澤 円(さわ・まどか) 圓窓 代表取締役 1969年生まれ、千葉県出身。株式会社圓窓代表取締役。立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT子会社を経て、1997年にマイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に入社。情報コンサルタント、プリセールスSE、競合対策専門営業チームマネージャー、クラウドプラットフォーム営業本部長などを歴任し、2011年にマイクロソフトテクノロジーセンター長に就任。業務執行役員を経て、2020年に退社。2006年には、世界中のマイクロソフト社員のなかで卓越した社員にのみビル・ゲイツ氏が授与する「Chairman's Award」を受賞した。現在は、自身の法人の代表を務めながら、琉球大学客員教授、武蔵野大学専任教員の他にも、スタートアップ企業の顧問やNPOのメンター、またはセミナー・講演活動を行うなど幅広く活躍中。2020年3月より、日立製作所の「Lumada Innovation Evangelist」としての活動も開始。主な著書に『メタ思考』(大和書房)、『「やめる」という選択』(日経BP)、『「疑う」からはじめる。』(アスコム)、『個人力』(プレジデント社)、『メタ思考 「頭のいい人」の思考法を身につける』(大和書房)などがある。 ----------
株式会社クロスリバー代表 越川 慎司、圓窓 代表取締役 澤 円 構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム) 文=清家茂樹