<連載 僕はパーキンソン病 恵村順一郎>ぐるるっ ぐるるっ 人間と共生2千年 カエルは僕の先生 絶滅などしてもらっては困るのだ
草野の「蛙詩」の面白さのひとつは、カエルの鳴き声の多様な表現にある。 〈ぐりりににぐりりににぐりりにに/るるるるるるるるるるるるるるる/ぎやッぎやッぎやッぎやッぎやッ/ぎやるるろぎやるるろぎやるるろ/げぶららららららげぶららららら(略)〉 「第八月満月の夜の満潮時の歓喜の歌」 〈(略)けくっく けくっく けんさりりをる(略)びがんく びがんく がっがっがりりき(略)ぐるるっ ぐるるっ いいいいいいいいいいいいいいいいい(略)〉 「誕生祭」 ケロケロ、ゲロゲロといった、お決まりのパターンで鳴くカエルは、草野の「蛙詩」には出て来ない。 さて、カエルの減少は全国的な趨勢(すうせい)のようである。さらに言えば、地球規模の傾向らしい。草野が聞けば、きっと「ぐるるっ」「ぎゃッ」と嘆くに違いない。 「山渓ハンディ図鑑9 日本のカエル」(山と渓谷社、2015増補改訂)は、日本での減少の原因を「この半世紀ほどの稲作の大変革」と指摘する。 田んぼや用水路をコンクリートで覆う圃場(ほじょう)整備の結果、カエルが水路やあぜを越えて上陸できなくなった▽一年中水をたたえていた湿田が、排水路の整備で乾田となり、産卵場所が失われた▽イネの品種改良により耕作期間が短縮されたため、カエルの繁殖時期とズレが生じた▽害虫駆除のための農薬の使用▽減反政策によって田んぼそのものが減った――ことなどを挙げている。 地球温暖化による気候変動も背景にありそうだ。 両生類は、地球温暖化の最初の犠牲者になる可能性が指摘され、「環境のカナリア」と呼ばれる。陸と水辺の双方の生息環境を必要とするうえに、皮膚が薄く、卵に殻がないため、湿度や気温の変化の影響が直撃するからだ。 人間と縁が深いカエル。その減少は、やはり人間が引き起こしたものなのだ。 日本には46種類(2013年現在)のカエルが棲む。島国であるがゆえに、84%が固有種だ。日本で絶滅すればそのカエルは地球から消えることを意味する。 絶滅の危機からカエルを救うのは、原因をつくった人間の責任である。