将来の総理候補が落選した理由~裏金問題だけではない 自民・武田良太氏(56) 3つの敗因
「クリーンな政治」求める対抗馬
3回目の挑戦で武田氏を破って当選した新人の村上智信氏。今回の選挙戦では「古い政治をやめる」「クリーンな政治、わかりやすい政治の実現」を訴え続けた。 村上智信氏は、記者が1年半ほど前に話を聞いた時にも、11区内の自治体で不透明な行政運営が行われていることを問題視していて、その主張は選挙期間中も一貫していた。 村上智信氏「田川市郡、公共工事にしてもそのお金の使い道を公開しない。どの企業にお金を渡すかを明らかにしない。そういう事例があります。やましいことがなければ明らかにすればいい。どうして隠すんだ。」 自民党の裏金問題に、11区内の一部自治体で行われている不透明な行政運営への批判が加わって、武田氏の票を減らす結果につながったのではないだろうか。
応援演説の効果は?
武田氏の応援に駆け付けたのは、11区の議席をめぐり過去4回も激しく争った因縁がある元衆議院議員の山本幸三氏だった。山本氏の支援者はもともと「反武田」の人が多かったと聞く。今回の応援について、ある自民党の関係者は「むしろ逆効果だった。なぜ二人で立ったのか理解できない」と話していた。さらに、公明党の幹事長の応援を受け、小池百合子東京都知事から応援メッセージをもらっていた。 一方、村上智信氏の応援には、11区にある3市のうち豊前市と田川市の市長がマイクを握った。村上卓哉市長は、去年4月の田川市長選挙で武田氏が推す前職(大任町・永原町長の親族)を破って当選している。村上卓哉市長は「1年半前にこの田川市で巻き起こした旋風。あの風を今度は国政に向けて起こしていただきたい」と訴えた。
猛烈な逆風「何と戦っているのか分からない」
総務大臣や国家公安委員長などを歴任した武田良太氏。抜群の集金力を誇り、いわゆる大物政治家として、支持者からは「将来の幹事長・総理候補」という声も上がっていた。その武田氏、接戦が伝えられるとそれまでの強気の発言から一転する姿も見られた。 武田良太氏 23日 「戦えば戦うほど猛烈な逆風を感じる選挙であります。何と戦っているのか分からない重い空気が漂う」 武田氏が戦っていた重い空気こそが、「民意」なのではないだろうか。疑惑を持たれた中で、どれだけ誠意を尽くして説明してきたのかが問われていたはずだ。 マイクを使った選挙活動ができる最後となる26日の午後8時前の「マイク納め」で武田氏は選挙戦を振り返って、「どんよりした空気の逆風の中の選挙」と表現していた。 裏金問題、統一教会との関わり、そして大任町長との関係。いずれの敗因にも共通するのは、不透明、そして説明責任を果たさない姿勢だ。 「どんよりとした空気」こそが、説明が十分に尽くされないことで有権者が武田氏と自民党に対して感じていたものかもしれない。