<城が語る>ハリルJにインパクトを与えた柏木と物足りなかった金崎
ワールドカップのアジア2次予選のシンガポール戦が12日、敵地で行われ、日本が3-0で勝利して、グループEの首位に立った。6月のホームでまさのドローに終わった相手だが、本来のシンガポールとの実力差を考えると、勝ち点「3」を奪って当然の試合だが、しっかりと勝ち切ったことは評価できる。両サイドを高く保ち、サイドの基点をうまく作りながら、攻撃の流れとサポートの意識をチーム全体で共有できていた。それらのきっかけを作ったのが、ボランチで起用された浦和の柏木陽介の存在だった。 先月の中東遠征から3年8か月ぶりに代表復帰した柏木は、この日、長谷部誠とのダブルボランチで起用された。ワンタッチのシンプルなプレーを心がけ、縦への効果的なスルーパスを何本も通して、シンガポールディフェンスを揺さぶった。そして柏木の魅力は、パスを出すだけでなく、そこから自分も動きだして何かができる部分。かなりの距離を走った。 アイデアを持ったゲームメイカーでもある。左足が利き足で、バリエーションが豊富だから、相手ディフェンスからすれば、何をやってくるのか読めずに嫌だろう。リズムの作り方やバランスの保ち方の上手さも目についた。 この試合で柏木が与えたインパクトは、日本代表に選ばれていた頃の遠藤保仁を彷彿させた。今後、ボディコンタクトが強い強豪国を相手に、どれだけゲームをコントロールできるかを見てみたいが、チームに待望の新鮮なピースが見つかったような気がした。今後、ボランチのポジション争いは、長谷部、山口蛍、柴崎岳の中で競われていくだろうが、柏木は面白い存在だ。 5年9か月ぶりに代表復帰、ワントップで先発起用された鹿島の金崎夢生も、前半20分に見事な左足ボレーシュートで代表初ゴールを決めた。柏木よりも結果を出した金崎に注目が集まるのかもしれないが、今回、7人が召集されたFW争いにおいて金崎が存在感を示したか?と聞かれれば、まだまだ物足りない。動き出しのタイミングが合っていないケースが多く、余裕がある場面でオフサイドのミスも冒した。90分間、使われた中で決めるべき局面は、他にもあったが決め切れなかった。岡崎慎司と比べると連携力も決定力も落ちる。 ただ、岡崎―香川真司のコンビよりも、金崎―清武弘嗣の組み合わせの方がシンプルにプレーするので、ボールを持ちすぎる傾向にある岡崎―香川よりもチームとして攻撃のリズムは、つかみやすいのかもしれない。