フロント・シートの生地を求めてポーランドへ! ヤフオク7万円のシトロエン・オーナー、エンジン編集部ウエダ 入手困難なパーツを求めてふたたび海外行きを企てる! その4【シトロエン・エグザンティア(1996年型)長期リポート#58】
エグザンティアのためなら地球の果てまで(笑)
ヤフー・オークションで7万円のシトロエン・エグザンティアを手に入れ、10カ月と200万円かけての大規模修復後、走り出したエンジン編集部員ウエダによる自腹散財リポート。2023年はポーランドとフランスを訪ね、エグザンティアに関する2つのイベントに参加したが、2024年はなんと自腹で欧州に部品買い付け旅行に行くことになった! 今回は出発までのドタバタを報告する。 【写真13枚】フロント・シートの座面の生地を求めて、またしても自腹ではるばるポーランドへ! ◆欧州への航空券とホテル代で数万円? 2024年の海外行きの目的地は3つ。エグザンティアを今後も乗り続けるためには絶対欠かせない、ストラット・アッパーマウントのリビルド品がある東欧リトアニアのカウナス。 かつてシトロエンに在籍していたエグザンティアのデザイナーが登壇する、XM生誕35周年イベントが開かれるポーランドの首都ワルシャワ。 そしてリポート車とまったく同じ、初期型でグレードはV-SXで、外装色がブルー・モーリシャスで、内装が青い格子柄という解体車のあるポーランド南の都市、オポーレ。この3つの土地を繋いでいくのは、面白くもなかなか骨の折れる作業だった。 なにせこの買い付け旅行、当然全部自腹である。リポート車はさほど目立ったトラブルもなく落ちついているように見える(だけ?)だが、2024年の春は路上復帰後はじめての車検の時期だ。いかに旅費を抑えるかが肝だ。 日程的にどうしても動かせないXM生誕35周年イベントがあるのは2024年5月25日。これと前後してカウナスとオポーレをどう攻めるか……。2023年春のエグザンティア生誕30周年の時は、もう勢いだけで飛行機を手配したからかなり高くついたのだが、今回はある程度考える時間があった。 最初に思いついたのは、ポーランドの首都ワルシャワにまず向かい、35周年イベントに参加し、その後オポーレやリトアニアのカウナスをレンタカーでぐるりと回るというもの。しかし地図とにらめっこしてみると、ワルシャワを起点にカウナスとオポーレはちょうど反対方向だった。しかもワルシャワからカウナスは400km以上、ワルシャワからオポーレは300km以上ある。両方の都市を回るとなると、1400km以上レンタカーをひとり運転しなくてはならない。 空路はどうか。残念ながらカウナスには近隣に空港はなく、オポーレもポーランドの国内線ならワルシャワから近くの都市まで飛べないことはないが、かなり無駄な移動が多くなる。電車という案も浮かんだが、ポーランド国内の電車は、かなり遅れたり、それどころか普通に1本来なかったりもするよ、と知人から聞いてもいた。 そして散々悩み、様々なウェブサイトを探し続けたおかげだろうか。僕はついに見つけてしまったのである。コロナ禍によって使うことができず、期限切れの迫っていた航空会社のマイルをこのタイミングで上手く使って特典航空券に代えれば、さほど旅費をかけることなくカウナスとワルシャワに行けることに……。 往路と復路の異なる“オープンジョー”や、経由地で滞在ができる“ストップオーバー”という言葉をご存じだろうか。今回の旅なら、リトアニアとポーランドの間だけをバスやレンタカーで移動して到着地と出発地を変更したり、経由地をリトアニアとして短い時間入国するというような手段だ。ここでは詳細は省くけれど、5月25日のワルシャワ到着をマストとし、リトアニアへの移動をいろいろと検討した結果、見事に以下の様に空路が確定したのである。 まず往路が、東京・成田→中国・北京→ポーランド・ワルシャワ→リトアニア・ヴィルニュス。そして復路が、リトアニア・ヴィルニュス→ポーランド・ワルシャワ→東京・成田、というものだ。 運のいいことに、このルートは北京の乗り継ぎで5時間ほどロスするくらいで無駄がない上に、燃料代を追加で要求されない航空会社ばかりだったので、非常にコストが圧縮できる。具体的には、エコノミークラスなら3万円強でこれだけの移動ができてしまうのである。おまけに、余ったマイルはホテルの宿泊代に充てられる。 リトアニアのヴィルニュスから訪問先のエグザンティア維持の要となる部品の再生会社、エラストマーEU(Elastomer.EU)があるカウナスまでの移動も悩んだ。が、同社のチーフ・フューチャー・オフィサー、イルマンタス・ガリニス(Irmantas Galinis)さんによれば、バスもあるけれど、時間の読める電車がベストだ、という。ありがたいことに、丁寧に時刻表や予約サイトまで教えてくれた。 ◆リトアニア滞在は24時間以内!? 問題なのは、無駄がない=余裕がない、ということだ。せっかくのリトアニア滞在はおおよそ22時間半しかない。ワルシャワ到着はその翌日の朝、シトロエンXM生誕35周年イベントのまさに当日である。飛行機も電車も、なにか1つでも遅れたりすれば、すべての予定が狂ってくる。なかなかにチャレンジングだ。 もう1つの問題は、航空券の関係で、XMの35周年イベントの終わった後、5月26日と27日の予定がぽっかりと空いてしまったこと。僕はここで、FacebookのXantia PLというエグザンティア乗りのグループで売りに出た、解体車の売り主のいるオポーレに向かうしかない、と考えた。 ところがこの売り主は「エグザンティア1台まるごとでしか売らない」とFacebook上でアナウンス。いくらなんでもそれは無理である。クルマとしてはいちおう形になっているが、自力での移動はすでにかなり困難そうなコンディションだった。それに、例えばドリンク・ホルダーを付けてしまったので穴の空いているフロント・ドア内張の生地も、状態は良さそうだし手を出したいところだが、基本、僕が手に入れたいのはフロント・シートの座面の生地だけなのだ。クルマまるごとというのは、まったくあり得ない話だ。 結局、色よい返事は得られそうになく、オポーレ訪問はいったん今回の旅程から外すことにした。とはいえ帰国日になる5月27日はともかく、日曜日の5月26日に何かできないだろうか。さっそくポーランド語でいろいろと検索してみたところ、ワルシャワから南に100kmとさほど遠くないラドムという街で、この日、クラシック・カーのイベントがあることが分かった。 それくらいの距離なら、ひとりレンタカーで行っても楽しそうだ。僕はXM生誕35周年イベントの主催者で、ポーランドでフランス車の情報を発信しているウェブサイト、francuskie.pl代表のイエンドジェイ・フミレフスキ(Jedrzej Chmielewski)さんに、とりあえず決まったすべての予定と、もし可能ならこの日程で会えるポーランドの専門家やクルマ好きを紹介して欲しいと伝え、5月26日と27日はフリーにしておくことにした。 リトアニアでは超バタバタになりそうだから、初夏のポーランドで、少しくらいゆっくりするのも悪くない。 ところが、出発が差し迫ってきた5月中旬、オポーレのエグザンティア解体車の売り主が、まるごと1台ではもう売れないと察したのか、急にクルマから部品を外して販売すると言い出したのである。なんと日本を発つ前日になって、彼との交渉は始まったのだった……。 5月26日、日曜日にワルシャワからラドムまで行ってイベントに参加した後、どうするか。そこからさらに南西300kmのオポーレに移動する? レンタカーで? いや電車で? そもそも何処のホテルに泊まる? いまのホテルの予約はキャンセル? もしオポーレに行けたとして、日本に帰る翌27日夕方の飛行機が出るワルシャワまで、いったいどうやって戻る? ……こうして結局旅の後半のスケジュールは何も決まらないまま、僕は成田空港に向かうことになったのである。 さて次回以降はリトアニア篇、ではなく、ちょっとまた時計の針を巻き戻し、エグザンティアの2023年の冬から2024年の春にかけての、いいニュースと、悪いニュースについてご報告していく。前者は、実はすでに新潮社ENGINE本誌で公開済みなので、その後の経過を少々。後者は、ご期待通り、旧いハイドローリック・シトロエン乗りなら誰もが苦悩する、緑の液体LHMとの壮絶な戦いについて。そう、このハイドロ車の血液ともいえるLHMの通る複雑な配管との悪戦苦闘の日々は、結局2023年末にはじまり、春の車検を挟んで、なんとまるまる3カ月も続いたのだった……。 ■CITROEN XANTIA V-SX シトロエン・エグザンティアV-SX 購入価格 7万円(板金を含む2024年1月時点までの支払い総額は279万2253円) 導入時期 2021年6月 走行距離 18万3680km(購入時15万8970km) 文と写真=上田純一郎(ENGINE編集部) (ENGINEWEBオリジナル)
ENGINE編集部
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