“受刑者”を消防士起用 米国・山火事で活躍のエリート集団も…背景に深刻な人手不足
気候変動などの影響で深刻化している山火事。被害を食い止めるべく活躍する、アメリカのエリート消防隊が注目されている。しかし、この隊員たちは意外な経歴を持っていた。災害の現場で闘う男性たちの正体とは!? 【画像】山火事と闘うエリート消防隊「アルカディア20」 更生に向け火災現場出動
■約230人の受刑者が消防作業に参加
気候変動により、世界中で深刻化する山火事。ロサンゼルス郊外では、今年初となる大規模火災が発生し、東京・世田谷区とほぼ同じ広さが焼失した。 これから山火事が起きやすい季節を迎えるなか、ワシントン州のある消防隊が注目されている。 山火事の際、燃え広がらないよう事前に木や草などを燃やし除去する「火入れ」や拠点となるテントの設営、現場の調査など、様々な仕事をこなす消防隊員。特に変わった様子は見えないが、彼らには意外な経歴がある。 アルカディア20 ブリッジズさん 「誰だって人生の中で間違った判断をします。でも、私たちは自分の過ちから学びます」 「アルカディア20」と呼ばれるチーム。実は、受刑者らによって構成されているのだ。 ワシントン州では、更生プログラムの一環で、およそ230人の受刑者が消防作業に参加している。アルカディア20は、その中で能力に秀でた受刑者を選抜した「エリート消防隊」なのだ。
■消防局に就職する人も「大きな変革」
メンバーの一人、ブリッジズさんはギャング関連の銃撃事件を起こし、過失致死の罪で懲役10年の判決を受けた。 ブリッジズさん 「社会に恩返しをしていることが実感できます。誰かをできる限り助けているのです。だから、私は頑張れるのです」 アルカディア20の隊員は、消防作業に関わる技術と同時に、社会に認められるということも学んでいく。 更生プログラムスタッフ ハーディン氏 「彼らは社会に対して自分たちに価値があることを証明したいと思っています。そして、消防隊員として日々それを証明しているのです」 隊員には自由度の高い生活や受刑者としては破格の給与が支払われ、基本給は最高でおよそ60万円。年収は、手当てを含めると1000万円近くと、矯正施設の職員より収入が多い人もいる。 アルカディア20の監督者 フッド氏 「消防士として働くのだから、消防士と同じ給与を支払うべきです」 また、刑期を終えた隊員は、そのまま消防局に就職する人もいて、新たな人生を歩み出すきっかけになっている。 実際、ブリッジズさんも今月3日に刑期を終え、ワシントン州で消防士として働き始めた。 ブリッジズさん 「このプログラムに参加した時、刑務官たちは私のことを信じ、成功を望んでくれました。このプログラムは私にとって、まさに大きな変革でした」