見直し限定的、解明手付かず 焦る首相、「裏金」幕引き優先 規正法再改正、年内決着不透明〔深層探訪〕
自民党が21日に取りまとめた政治改革案の多くは、先の通常国会で成立した改正政治資金規正法で積み残した要検討事項をおさらいする内容にとどまった。「本丸」の企業・団体献金の扱いは表立った議論がほとんどされず、派閥裏金事件の真相解明に向けた取り組みも手付かずのまま。衆院選に大敗しながらも、来夏の参院選を見据えて事件の幕引きを急ぐ政権の思惑がにじむ。 【ひと目でわかる】自民党の政治改革案 ◇最低ライン 「基本的な考え方を取りまとめた。年内に決着すべきものはすべきだ」。21日、自民の政治改革本部に出席後、石破茂首相(党総裁)は議論の成果を記者団にアピールし、各党に賛同を求めていく考えを示した。 28日召集の臨時国会を前に自民が党内論議を急いだ背景には、首相の焦りがある。衆院の与党過半数割れで求心力が低下する中、局面打開へ「臨時国会で政治改革にめどを付けなければならない」と周囲に話し、第2次石破内閣発足に合わせて年内の規正法再改正を打ち出した。 その半面、スケジュールありきで議論が進んだ感は否めない。政治改革本部で全議員対象の総会が開かれたのは初会合の12日と21日の2回。その間は一部議員による水面下の調整が続いた。 法改正の案として盛り込まれた(1)政治資金の支出を監査する第三者機関設置(2)外国人による政治資金パーティー券購入の禁止(3)規正法違反事件などで党所属国会議員が起訴された場合の政党交付金停止―はいずれも改正法の付則で検討事項としたもの。新たな打ち出しに乏しい。 政策活動費の廃止も、9月の党総裁選で首相を含む複数の候補が言及していた。自民関係者は今回の改革案の内容を「最低ラインだ」と語る。 ◇腫れ物 一方、避け続けたのが企業・団体献金への対応だ。初会合で出席者から存続の必要性を訴える声が上がると、調整の過程では「企業献金が悪との考えは取らない」(小泉進次郎政治改革本部事務局長)と早々に議論を封印。のみならず、付則に盛り込まれた個人献金促進策の検討まで「声高に議論すれば企業・団体献金禁止までテーブルに上がってくる」と先読みし、「腫れ物」を扱うように再改正の案からあえて落とした。 裏金事件に絡んでは世論の逆風を意識し、政治資金収支報告書不記載額の2倍相当を被災地の復興事業に寄付する案が浮上した。しかし、これも取りまとめ段階で「あくまでも参考だった」(小泉氏)と立ち消えに。21日の総会で「裏金」の扱いについて尋ねたのはたった1人。真相解明ははなから検討対象外だった。 ◇見えぬ与野党協議 自民案の策定を踏まえ、規正法再改正は今後、立憲民主党や日本維新の会などが加わる与野党協議に舞台を移す見通しだ。公明党も早期の協議入りを求めている。 ただ、企業・団体献金は立民や維新、共産党などが禁止で足並みをそろえる。裏金事件そのものを巡っても厳しい対応を迫られるのは必至だ。経済対策で政権に歩み寄った国民民主党も企業・団体献金に関しては立場を明確にしていない。 自民案に対し、野党の国対関係者からは「こんな内容でまともに協議できると思っているのか」と非難の声が上がる。「抜け穴だらけだ。われわれの注文に年内で対応できるとは思えない」。立民幹部はこう述べ、首相が唱える「年内決着」に簡単に応じない意向を示した。