薬の安定供給へ、在庫や生産量など流通を見える化…厚労省が2027年度にも開始予定
医薬品の安定供給に向け、厚生労働省は、薬の生産量や在庫量、処方量などの流通状況を一元的に把握するシステムを開発する方針を決めた。運用を2027年度にも開始する予定で、不足の懸念がある薬や足りない薬を迅速に見つけ、増産要請などの対策にいかす。 【図】日本の後発薬メーカーは中小企業が大半を占める
国内では20年末頃から、ジェネリック医薬品(後発薬)を中心に薬の供給不足が続いている。日本製薬団体連合会などの調査では今年9月時点で、先発品を含む医薬品1万6549品目のうち、3066品目(19%)が「供給停止」や全ての注文に応じられない「限定出荷」となっている。
長期化の背景には、企業が他社の生産量を把握できないことから限定出荷の解除に踏み切れなかったり、薬局や医療機関が流通量が分からないまま過度に発注したりする事情がある。
新システムでは、抗菌薬や解熱剤、抗血栓薬など必要性が高い薬と、感染症に対応する薬を扱う。25年度から行う実証事業を経て、対象品目を選ぶ。厚労省は、企業から生産、在庫、出荷の量を、卸売業者から出荷や在庫の量をそれぞれ定期的に報告を受ける。医療機関の処方や薬局の調剤に関する情報も収集する。
集めたデータを分析し図表で示す。各月の成分ごとの生産量と出荷量をグラフ化して在庫量の増減をみたり、薬局の調剤量と入荷量を比べた結果を地図に色分けして落とし込み、薬の需給バランスを確認したりすることを想定する。
分析結果は報告企業などにも公開する。薬局の在庫の抱え込みを防ぐことや、業界全体の生産量を把握し、企業が限定出荷の解除を決断しやすくなる効果が期待できるという。