「琴桜」51年ぶり優勝、半世紀の時超え孫が賜杯「間に合って良かった」初代と同じ大関5場所目
<大相撲九州場所>◇千秋楽◇24日◇福岡国際センター 半世紀の時を超え、賜杯に「琴桜」のしこ名が再び刻まれた。大関琴桜(27=佐渡ケ嶽)が14勝1敗で念願の初優勝を飾った。21年ぶりの大関相星決戦となった結びの一番で、豊昇龍をはたき込みで退けた。「琴桜」としては祖父である初代が最後に制した73年名古屋場所以来51年ぶりの優勝。大関5場所目で賜杯を手にし、来場所は13勝2敗で優勝に準じた豊昇龍とともに横綱昇進に挑む。 【写真】父・佐渡ケ嶽親方、母・真千子さんの力を借りながらお酒がそそがれた銀杯に口を付ける琴桜 ◇ ◇ ◇ 横綱だった祖父が手にした賜杯を、半世紀の時を超えて孫が再び抱いた。「琴桜」のしこ名としては、初代の祖父が最後に制した73年名古屋場所以来51年ぶりの優勝。巨大なトロフィーを手にした感想について琴桜は「重かった」とぽつり。祖父と孫の優勝は、極めて異例の快挙となった。初代と同じく大関5場所目で初優勝を飾り「間に合って良かった」と笑った。 大関豊昇龍との一騎打ちを制した。21年ぶりの大関相星決戦。相手の突き押しをこらえて左を差す。投げを打たれても踏ん張って回り込むと、上手が切れた相手がバランスを崩して腹ばいになった。勝利の瞬間は「がむしゃらだったので覚えていない。相手が土俵に落ちていたので、やっと勝ったんだなと」。勝ち名乗りを受ける直前、大きく頬を膨らませて息を吐いた。 年間66勝とし、単独での最多勝も決めた。今年は関脇だった初場所で13勝を挙げ、場所後に大関昇進。6場所中5場所で2桁勝利と安定感を発揮し、充実の1年を最高の形で締めくくった。活力となったのがライバルの存在だ。大関陣が優勝戦線を引っ張った今場所、琴桜本人は今場所中、「他人のことは関係ない」とマイペースを装った。それでも兄弟子にあたる秀ノ山親方(元大関琴奨菊)は自身の経験も踏まえ、新大関大の里の存在が刺激になったと分析。「負けじと奮起したことが最大の原動力」と力を込める。師匠で父の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)も、「誰が上がってきたとしても、負けたくないとの思いは常に持つもの」。その大の里が脱落した後はもう1人の強敵、豊昇龍としのぎを削った。 3大関の中では唯一優勝経験がなかった。3日目に平幕王鵬に敗れ、大関陣の中で最初に黒星がついた。宿舎に帰ると、1人で黙々と四股を踏んだ。しっかり気持ちを切り替えると、その後は安定した取り口で白星を重ねた。 今場所で優勝を争った豊昇龍とは、来場所での同時昇進の可能性もある。「まだ上があるので満足していない。しっかり準備して、やれることをやっていきたい」。1人横綱照ノ富士の休場が続く中で、3大関が切磋琢磨(せっさたくま)。来場所で東大関を4場所連続で務めることになる琴桜が、先頭に立って新時代を切り開く。【奥岡幹浩】