インパクト投資って何?お金もうけと社会課題解決の両立目指す ESGとの違いは?NPO出身の上場企業も登場
今回、株の売り出しで得た資金約4億円はITエンジニアの採用など事業拡大に使うという。 ▽ESG投資とは何が違うのか? 環境問題や倫理面を重視する経営や投資に関する指標はこれまでいろいろあった。最近では代表的な例として、環境・社会・企業統治を意味する「ESG」という言葉が投資の世界では知られている。欧米の投資ファンドはESG投資の一環で、気候変動対策として二酸化炭素(CO2)排出の削減や、生産現場から児童労働や強制労働を排除するよう企業に求める動きを強めた。では、インパクト投資とは一体何が違うのか。 インパクト投資の普及を図る社会変革推進財団(SIIF)の工藤七子常務理事は「一部重なるところがあるが、ESGはリターン(投資収益)の改善の手段。インパクト投資は社会・環境課題もリターンと同様に追求する」と説明する。つまり、投資に対して収益と並んで、社会的課題や環境問題を解決しようとする意図を持ち、その効果を検証していく姿勢を打ち出すことだという。
SIIFによると、インパクト投資は2007年に米ロックフェラー財団が提唱した。工藤さんは、その翌年にリーマン・ブラザーズの経営破綻をきっかけに起きた世界同時不況が、投資の世界に大きな影響を与えたと指摘する。巨大な投資銀行の失敗が世界経済にもたらした混乱に対して「社会にポジティブな金融をやっていこうという倫理的な揺り戻しがグローバルに大きくなった」という。 ▽「骨太の方針」にも記載されたが、認知度はこれから 日本では金融庁が2020年にインパクト投資に関する勉強会を関係者と始め、岸田政権も政府の経済財政運営の指針「骨太の方針」でインパクト投資の普及に向けた基本的支援を2023年度内に策定すると盛り込んだ。 ただ、個別の動きはこれからだ。2022年度の日本でのインパクト投資残高は5兆8千億円。世界の1兆1640億ドル(約170兆円、2022年)と比べると微々たる金額だ。一般社会の認知度も課題で、SIIFの調査ではインパクト投資の意味を知っている人は7%にとどまった。
工藤さんは「一般の認知度はこれからだが、ミレニアル世代の関心は高い。ネット証券でインパクト投資をテーマにした投資信託などが出てくれば、伸びてくるのでは」と期待する。 雨風太陽は上場初日、1044円の公募価格より26%高い1320円で初値が付いた。紋付きはかま姿で東証でのセレモニーに臨んだ高橋社長は「経済性と社会性の両立はできるという先駆けになりたい。地方から日本の閉塞を打破する会社になりたい」と力を込めた。株価は堅調に推移している。