古生物学者が語る 夏休みに博物館・恐竜展の化石鑑賞を10倍楽しむ方法
(5)進化:特殊な進化のパターン等をあらかじめ知っておくと、化石の楽しみが倍増すること間違いなしだ。化石の展示場で、簡潔にうまくまとめてある説明や解説は、非常に役に立つ。加えて自分で(特定の種やグループを)ネットやスマホなど使って、気に入った化石の目の前で、素早く検索することもいいアイデアだ。(この21世紀、お互い文明の機器をおおいに享受しましょう。) 例えば体の大きさ時代を通した違い(進化)や食性の変化、四足から二足歩行への変化(その逆のパターンもありえる)など、恐竜においていくつものケースが知られている。こうした進化上の流れをつかんで、骨や骨格の大きさや形の違いを改めて比べてみると、意外な事実が発見できるかもしれない。 特に様々な種類のたくさんの化石が一箇所にまとめて展示してある場合、いくつもの化石種を同時に比較することのできる「大きな特典がある」ことを。改めてここで強調しておきたい。豪華なビュッフェ形式のレストランで、いろいろつまんで味比べ・食べ比べするのがやはり楽しいのと同じだ。 ちなみに化石標本を研究者が調査する時、食べ物や飲み物の持ち込みは厳禁だ。おにぎりをつかんだ手で化石に触ると、水分や食べ物を通して繁殖するバクテリアなどが、直接ダメージを与える可能性があるからだ。マナー違反ということもあるだろう。 私は展示してある恐竜骨格や骨の標本を調査する時、写真を非常にたくさん撮る。デジカメもスマホも両方同時によく用いる。その際、同じ化石標本でも様々な角度で写す。(後から3次元的な感じをつかめるのがベストだ。)大きさを記録として残すため、物差しか代わりになりそうなもの(ペンとか10円玉など)とともに写すこともする(注:あらかじめ許可が要る時もある)。大きな恐竜骨格なら、時々、他の人に頼んですぐそばに立ってもらうこともよくする。 その日のうちに写真はコンピューターにダウンロードして、ファイル名や各フォルダーに分類しておく。必要な時はメモもとっておく。後から「この写真はどの化石標本だったのか?」という、(化石研究者としてはかなりつらい)事態を未然に防ぐため。こうしたプロセスやちょっとした気遣いは、研究者でない方にとっても有効かもしれない。 さて今回はあえて最新の化石研究など取りあげず、夏休みにあわせより身近で役に立ちそうなテーマに焦点を合わせてみた。時々はこうしたテーマについても、機会をみて今後も紹介してみたい。最後に個人的なメモを一つ。一條さん、恐竜展の写真を分けていただいて有難うございました。イベントのご成功をここアラバマより応援させていただきます。