お腹に胎児、長~い首。恐竜の奇妙な祖先?三畳紀ディノケファロサウルスの謎
トカゲ・ヘビ類、そしてカメ類の種の数と比べると、主竜類(=ワニ類)は極端に少ない。爬虫類の一大グループと呼ぶのに抵抗を覚える方さえいるかもしれない。 ここであらためて主竜類の名誉のためにいくつか断っておきたい。現在の分類学では、全ての鳥類も厳密には、進化系統上、この主竜類に組み入れることができる。今日、ニワトリや鳩、ペンギンからダチョウなどの鳥たちは世界各地に繁殖している。トータルでその数は実に1万種近くに及ぶ。そしてもう一つ余談を付け加えると、カメ類も主竜類と非常な近縁(または同一グループ)であるとする仮説さえ、最近出されている。 しかし先述のコープ博士が活躍した19世紀後半からその後100年くらいの間、現生の主竜類は「ワニだけだ」という考えが主流だった。伝統的に羽毛をもつ鳥類は爬虫類とは全く別の単独のグループに分類されてきた。カメ ── 主竜類近縁説も、最近の遺伝子データに基づく研究によって、その可能性が指摘され始めたにすぎない。(筆者注:この件は興味深いが説明すると長くなるのでまた機をみて改めて紹介してみたい。) それではどうして主竜類に「栄華を極めた爬虫類の一大グループ」という輝かしい称号が与えられたのだろうか? この問いに対する答えは「中生代の化石記録」にある。 主竜類には実は全ての恐竜類(Dinosauria)が組み入れられている。あの大型肉食恐竜ティラノサウルスも、剣竜ステゴサウルスも、角竜トリケラトプスも、古生物学者はみな主竜類(=主竜上科Archosauria)に分類する(こちらの英語サイトに詳しい説明あり)。 今のところ(鳥類を除く)全ての中生代の恐竜たちは「陸上生活を行っていた」と考えられている。中生代の海洋に現れた大きな魚竜(イクチオサウルス類)、首長竜、海トカゲ・モササウルス類などの仲間は、どれも恐竜とはまるで別グループの爬虫類だ(こちらの図参照)。(私の経験上、勘違いしている方がかなり多いようだ。) そして恐竜だけでなく、その直接の祖先や近縁または遠い親戚にあたる初期アルコサウルス類(=主竜形類Archosauromorpha)の仲間も、後述するように多数存在した。そのほとんどがCrurotarsi類のように最古の恐竜が登場する前後に出現し、三畳紀を通して進化・適応放散を遂げた。そして中生代に大空を支配した翼竜(Pterosauria)も、この主竜類の仲間だった。 膨大な化石記録は、主竜類の仲間が中生代(約2億5200万年―6600万年前)という非常に長い時代にわたり、陸と空を文字通り制圧していたことを示している。主竜類の主竜類たる所以(ゆえん)だ。