「アダルト動画」に無断で自分の声が…“声優”業界が「生成AI」に危機感をあらわにする切迫した事情
なぜ生成AI推進派と対立するのか
――いわゆる“生成AI推進派”は、ネット上で過激な言動をすることでも有名です。 福宮:生成AIで遊んでいる人たちは、作成したものにたくさんの人が“いいね”をつけてくれる、その反応が楽しくてやっているのだと思います。芝居をやったことがない人が、他人の声を使って芝居のようなことができるわけですからね。楽しいおもちゃを取り上げないでくれ、という想いが強すぎて、言動が攻撃的になってしまうのではないでしょうか。彼らの心理は、私には正確に理解はできませんが… ――経済界には、生成AIを規制すると、世界的な技術革新や科学の進歩から遅れるのではないかという懸念を示す人もいます。 福宮:著作権が足かせになって技術革新が進まない、取っ払ってしまうべきだという意見があり、現在の法律になったことは理解しています。しかし、それから6年近く経過して、技術革新はあったのかもしれませんが、それを覆い隠してしまうほどの被害も見られます。現在の生成AIは、著作権を踏みにじるものであるとの認識が広がっていて、とてもではないですが、クリエイティブ分野では商用利用はできません。こうなったからには、従来の著作権法に則ったやり方、つまりは許諾を得た上で開発に活用しなければ生成AIという技術そのものへの嫌悪感が高まりかねません。さらに言えば、私は日本が海外に勝てる産業は生成AIではなく、アニメや漫画などのコンテンツだと思っています。方向転換を望みます。 ――先日の鳥山明さんの死去のニュースを通じて、多くの人が日本のアニメや漫画は世界に評価されていることを実感したと思います。 福宮:そうですね。海外のファンの方々は偉大な才能が消えたことを悼み、大いなるリスペクトを表明してくれたと感じました。ただ、一方でオンラインの世界ではあっという間に“鳥山先生風”の生成AIのイラストが並び、そこにもクリエイターに対するズレたリスペクトを感じました。世界の反応を見ると、経済界も、政界も、日本が世界に誇るコンテンツの魅力を伸ばすことを考えるべきなのに、その魅力を潰すことを推進していると感じます。なぜ、日本のコンテンツが海外に受けているのか。日本はガラパゴスだといわれていますが、それゆえの良さを見直し、発展させていくことが大事ではないでしょうか。明治や昭和時代のように、欧米に追いつけ追い越せという考えも重要だと思いますが、その時代とはフェーズが変わったと思います。