JR四国全区間で利益面改善 コロナ前の水準に
JR四国が8日公表した2023年度の路線別収支によると、四国内を走る8路線18区間の全てで利益面が改善した。23年5月からの運賃値上げで全区間の運輸収入が前年度を上回り、新型コロナウイルス禍前の19年度とほぼ同水準となった。列車の運行に直接かかる費用(直接費)だけを基にした損益計算では、黒字区間が一つ増えて6区間となり、残る12区間の赤字幅も大きく縮小している。 瀬戸大橋線と予讃線の松山―高松間が前年度に続いて黒字を維持したほか、高徳線の高松―引田間が黒字に転換した。収入と直接費のみで勘定すると、全線計で17億5800万円の営業利益を確保。収入だけでは運行費を賄えない赤字区間をカバーし、4年ぶりの黒字となった。 赤字額が最も大きかった区間は、土讃線の琴平―高知間の5億5100万円。予讃線では、松山―宇和島間が3億4700万円の赤字、海回りの向井原―伊予大洲間が2億1400万円の赤字だった。 予土線の北宇和島-若井間は8100万円の収入に対し、運行にかかる直接費が3億6300万円。修繕費が減ったこともあり、赤字幅は前年度よりも4300万円減った。 100円の収入を得るために必要な費用を示す指標である営業係数が四国内で最も高かったのは、牟岐線の阿南―阿波海南間の484円。次いで予土線の449円だった。 1日の平均乗客数を示す輸送密度は、全線計で3961人。感染症の5類移行に伴う人流回復で前年度を372人上回ったものの、19年度の4416人には届いていない。JR四国総合企画本部は「収入面ではコロナ禍前の水準に回復しつつあるが、リモートワークの普及などの影響もあって輸送密度が戻っておらず、引き続き利用状況は厳しい」とみている。 管理費や減価償却費など本社が負担する費用(共通費)を含めた勘定では、四国内全線で136億2300万円の赤字となっており、鉄道事業の構造赤字の解消には至らない。区間の収支が黒字となったのは、瀬戸大橋線の9億100万円だけだった。(高橋宏幸)
愛媛新聞社