「中学受験全落ちしました」経験者が振り返る当時の思い 「勉強はムダだと思うように」「母が塞ぎ込んだのがショック」…無謀な志望校選びがその後の人生に影響も
消えないコンプレックス
都内の大手メーカーで働くOさん(20代/男性)も中学受験に失敗した一人。今のOさんの周囲には中高一貫出身者が多く、隣の青い芝の話に興味が尽きない。 「僕の出身は日東駒専ですが、運よく大企業に入り込めました。そこで出会ったいわゆる高学歴の人たちは、中高一貫校卒の方が多いんです。なぜ中高一貫卒かわかるかといえば、高学歴の人がいるとつい僕の方から、『高校私立ですか?』とか聞いちゃうんですよね。僕も中学でどこかに受かっていたら、もう少し上の大学に行けたのかなとか、ついつい考えてしまいます」 Oさんは、「僕が知り得なかった世界に行くことができた人たちは、その後の人生のルートも変わっていることを感じる」という。そしてコンプレックスが消えることもないという。 「純粋に興味津々でどんな勉強環境だったのかなどを聞いてしまうのですが、僕が中学受験事情に詳しいのが分かると、『あれ? Oって私立だったっけ?』と聞かれることがあって、それは切ないですね(笑)。彼らには『公立の方が共学だしいいじゃん』と言われることもありますが、僕のコンプレックスが消えることはありません。結局はないものねだりですね」(Oさん)
塾側が重視するのは「実績」より「成功体験」
都内で塾講師をしているAさん(40代/男性)は、「基本的には、無謀すぎる中学受験には挑戦させたくない」と言う。 「塾側が志望校のランクを下げるようにアドバイスするのは、確実に合格させて塾の実績をあげるためと言われることがありますが、実際のところ、実績よりもその子のためを思ってのことです。 もちろん挑戦することに意味はあると思いますし、上を狙うことで直前まで学力が伸びることも珍しくありません。ただ、『合格した』という成功体験を作ってあげたい気持ちが強いんです。中学で浪人は考えにくいですからね。 明確に行きたい学校がある場合は、もちろんその意思を尊重して滑り止めを提案する形を取りますが、頑なにそれを嫌がる親がいるのも現実で……。子供にとってトラウマになってしまいかねないし、案外多いのが、親が自分を責めてしまうケース。それもあって、1校だけは合格できるように組んであげたいというのが本音です」(Aさん) 「全落ち」の裏では、本人だけでなくさまざまな人の思いが交錯している。(了)