「グラディエーター」から「悪魔祓い師」へ、名優ラッセル・クロウはどこへ行く?
◇新作で名優クロウが見せた床エビぞりバンギング キレるクロウをエンタメ化したような『アオラレ』にも驚いたが、『ジ・エクソシズム』にはさらに仰天。 タイトルでおわかりのように悪魔払いの映画。悪魔にとりつかれ、お約束の人間離れした動きを見せるのが、なんとクロウなのだ。床エビぞりバンギング、テーブルヘッドバンギングまで披露する。 クロウが演じるのは、ドラッグとアルコールの問題を抱えた俳優。前任者の謎の死により回ってきた悪魔祓い師役に、再起をかける。だが、役に入るにつれ、奇怪な行動が目立ち始める。娘は父がまた悪い習慣に戻ったのではと心配するが……。 惜しいと思わせるのが、この設定だ。同じように、現実の問題とスーパーナチュラルの境界をぼかして不安をあおったところに、親子の情をまぶした『レリック -遺物-』(2020)で、ナタリー・エリカ・ジェームズ監督は長編デビューを成功させている。ボケかスーパーナチュラルか判別しかねる祖母が怖く、祖母を案ずる母と娘に寄り添わせる一味違うホラー映画になっていた。 描き方によっては成功したかもしれない設定に、父の少年期、娘の恋愛まで盛り込み、脈絡がない印象になってしまった『ジ・エクソシズム』は、ミラー監督が脚本にも参加している。 そもそもエクソシズムが悪魔祓いとわかるのは、ホラー映画の金字塔『エクソシスト』(1973)で、タイトルが悪魔払い師を意味すると知ったからだ。ミラー監督は、その本家本元『エクソシスト』で、2人組の悪魔祓い師の若いほうを演じたジェイソン・ミラーの息子だ。 ダグラス親子は、わかりやすく名優の血が引き継がれたようだが、ミラー親子で引き継がれたのが悪魔祓い映画だったとは。当時、スタッフやキャストら関係者に続いた不運まで、『エクソシスト』の呪いと呼ばれたものだ。『ジ・エクソシズム』があんまりなのも、親から子へと引き継がれた『エクソシスト』の呪い? ◇さてクロウはどこに向かうのか? クロウには前年に主演作『ヴァチカンのエクソシスト』があり、これから、その続編も出る。短期的に向かっているのは悪魔祓い方面で間違いないが、長期的にはニコラス・ケイジ方面に向かっていると思う。 やはりアカデミー賞俳優ながら、B級映画に出まくっているケイジだ。年数本もある出演作はおのずと玉石混合で、低評価映画もクロウの比ではない。 どうみても出過ぎなケイジだが、なかにはバイオレンスが笑いに収束していく『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』(2018)のような怪作もあり、侮れない。 最近、ケイジは、不動産投資失敗による借金を返済するため、多く出演していると明かした。作品を選んでいる場合ではなかったらしい。事情を聞けば、需要が途切れず出演し続けているのはアッパレとも言える。とはいえ、クロウにもそこまで多くの出演を望むかは微妙だ。
山口 ゆかり