センバツ高校野球 常総学院 接戦制す 先制点、守り切る /茨城
第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)で25日、当初の予定より2日遅れて1回戦最後の登場となった常総学院は、日本航空石川を1―0で退け初戦を突破した。六回に挙げた先制点を自慢の堅守で守り切り、前回出場した2021年春に続いて初陣を白星で飾った。2回戦は大会第8日の第3試合(27日午後2時開始予定)で、報徳学園(兵庫)と対戦する。【川島一輝、江沢雄志】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 地元土浦市など各地から駆けつけた約1000人の応援団がアルプススタンドから見守る中、常総学院は一回、先頭の丸山隼人(3年)がいきなり左翼線二塁打。得点には結びつかなかったが、父聡さん(49)は「初回に打ってくれて、チームも勢いに乗ってくれるはず」と期待を込めて、メガホンをたたいた。 スタンドのボルテージが上がったのは、グラウンド整備後の六回。ゼロ行進が続くなか、島田直也監督(54)が「もう一回、初回の気持ちでいこう」と声をかけると、四球や犠打などで1死三塁の好機に。4番・武田勇哉(3年)が確実に右犠飛を放ち、念願の先制点を奪った。 吹奏楽部が得点を祝う「常総節」を奏でて歓喜。応援指導部長の豊島涼乃さん(17)は「この1点は数字以上に意味を持つ大事な得点。もっと選手たちを盛り上げたい」と声を張り上げた。 裏の守備では、先頭打者の左中間飛球を中堅手の池田翔吾(3年)がダイビングで好捕し、相手に流れを渡さない。序盤の守備機会で「前に飛び込むか迷った打球をヒットにしてしまった」との反省を生かし、「一歩目を意識して思い切って飛び込んだ」ことが奏功した。 先発の小林芯汰(同)は最終回に1死一、三塁のピンチを併殺で切り抜けるなど、9回を119球、9奪三振で完封。島田監督は「今日は小林に尽きる」とエースをたたえた。小林も「初戦の入りは不安だったので、勝ててホッとしている」と心境を吐露。次戦に向けて「長所の真っすぐを生かし、良いピッチングをしたい」と力強く話した。 ◇次戦は先輩と応援 ○…「いいぞ、いいぞ常総」。途中小雨の降る中、スタンドを埋め尽くした大応援団を、赤と黄色のポンポンが彩った。全国大会常連のチアリーディング部はこの日も千葉県で大会の真っ最中。前日24日は球場に着いてから順延が決定し、応援に参加する予定だった上級生は関東へ戻った。関西に残った9人の下級生は前日夜もホテルで練習した息の合った応援を披露。大江優奈さん(16)は「先輩たちにとっても夢の舞台。次は一緒に踊れるように」と声をからし選手たちを鼓舞した。チームは先制点を守り切り、無事勝利。藤田明日香さん(16)は「常総節を甲子園で歌うのが夢だった」と笑顔を見せた。次戦は上級生も加わり、より厚みを増した応援が選手たちを後押しする。 ◇「勝つと信じて」市民らエール 土浦でPV 土浦市のJ:COMスタジアム土浦では常総学院のパブリックビューイング(PV)があり、市民や保護者らが日本航空石川との初戦を見守った。 両チームの投手が好投する中、無得点で迎えた六回表。常総が武田勇哉の犠飛で先制すると、スタンド席やダッグアウトで見守っていた人たちから「良し」と声が漏れた。九回裏、逆転のピンチを守備陣がダブルプレーで抑えると「初戦突破だ!」とハイタッチで喜んだ。 つくば市の運転手、高田光一さん(68)は「寒かったが来て良かった。勝つと信じていた」と笑顔。土浦市の会社員、大城幸則さん(50)は「常総に通う息子も現地で応援中。地震で被害に遭った石川県の分まで一戦一戦頑張って、土浦の名を全国にとどろかせて」とエールを送った。【鈴木美穂】 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇不調越え、好機に一振り 常総学院・武田勇哉一塁手(3年) 1年秋から4番に座る主砲の一振りがチームを勝利に導いた。 日本航空石川の先発・猶明(ゆうめい)光絆(こうき)(2年)の前にゼロ行進が続くなか、六回1死三塁の好機で緩い変化球を振り抜いた。「直球狙いだったが、開かずにうまく打てた」という打球は、三塁走者を還すのに十分な先制右犠飛となった。 実は2月下旬ごろから、左足を踏み込んだ際に生じる体の開きが大きくなり、「絶不調でバッティングが分かりません」と弱音を吐くほどの不振だった。 修正するため、バットを振り込む基礎練習を繰り返した。全体練習終了後は30分以上、ピッチングマシンで打ち込み、更に室内練習場で夜遅くまでトスバッティングを続けた。 努力を積み重ねて挑んだ聖地。「緊張していたが、このチームはみんなが打てるので、楽しんで打席に入れた」と得点場面を振り返る。 年始に「目を輝かせてプレーする」ことを目標に「覇輝」の2文字を色紙に書いた。その決意通り「ワクワクしながらプレーできました。覇輝できました」と声を弾ませた。自身も高校や法政大で白球を追った父・康宏さん(45)は「試行錯誤してきたと思う。大舞台でチームのために仕事ができ、自信になったのでは」と目を細めた。【川島一輝】