「2035年度までに温室効果ガス60%削減」ってどのくらい?新たに掲げる新目標で世界に存在感を示せるか【2025年ニュース展望】
現実路線を求める背景
一方で、現在の先進国は産業革命時代に多くの二酸化炭素を排出して経済成長を遂げてきた。 日本の経済を支える製造業など産業部門から排出される二酸化炭素は国内全体の34%に上る。 日本経済を長きにわたりけん引してきた自動車産業に高品質な部品を提供する鉄鋼業では、鉄分を含んだ鉄鉱石とコークス(=石炭を蒸し焼きにすることで炭素含有量が高くなった物)を高炉と呼ばれる炉の中で溶かす事で、鉄鉱石から酸素を除去(=還元)して鉄分を取りだしている ○鉄鉱石(FeとO)+コークス(C)⇒CとOが結びつく =鉄(Fe)と二酸化炭素(CO2)
鉄鋼業における脱炭素の取り組み
鉄鋼業の最大手「日本製鉄」は、2030年にも排出量を30%削減し50年にカーボンニュートラルを実現する目標を掲げ、CO2排出を大幅に削減するために「高炉水素還元」や「大型電気炉」など新技術の開発を進めている。 「高炉水素還元」は、高炉で鉄鉱石を還元する際にコークスの代わりに水素を用いる技術で、日本製鉄は12月20日、試験炉において世界初となるCO2削減40%超(実績値43%)を実現した。 ○水素(H)と鉄鉱石(FeとO) ⇒HとOが結びつく =鉄(Fe)と水(H2O) また、12月19日には鉄鉱石から天然ガスを使って酸素を除去し鉄を取り出す「直接還元鉄」で、通常の鉄鉱石に比べ不純物の含有が少ない鉄鉱石の鉱山を初めて取得し、2030年目処に、粉砕・選鉱などの設備を準備、鉄鉱石を掘り出せるような状態にする。
政府目標の実現性は?
民間企業がこうした取り組みを実現するためには、政府によるエネルギーコストの補助も同時に進める必要がある。電気で鉄スクラップを溶かし新しい鋼を製造する電炉を稼働するにもグリーン電力が必要であり、相当程度のコストがかかる。 コークスの代わりに水素を使う「高炉水素還元」を実装するには、グリーン水素やグリーン電力を購入する必要がある。特に開発フェーズではこうしたエネルギーコストがかかると開発用の資金が奪われ、結果として競争力が落ちる懸念もある。 経済産業省は、第7次エネルギー基本計画を公表。政府は再生可能エネルギーを使って水を電気分解して製造する、いわゆる“グリーン水素”の2030年の商用化を目指し水素発電タービンの早期実機実証を支援するほか、こうした水素を原料とする「グリーンアンモニア」などの活用を加速させるため技術開発を進めている。 環境省は25年2月までに政府の温室効果ガス削減目標とされるNDCを国連に提出する予定で、世界における日本のプレゼンスを示せるのか、注目が集まる。 (執筆:フジテレビ 経済部 岩田真由子)
岩田真由子