<潜入兄妹> 竜星涼&藤ヶ谷太輔の対峙シーンは「異様な緊張感」ドラマPが語る撮影裏話と最終話の注目ポイント
竜星涼と八木莉可子がW主演を務める「潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官」(毎週土曜夜10:00-10:54、日本テレビ系/※Hulu・TVerでも配信)。「大病院占拠」「新空港占拠」と同じチームによるオリジナルのサスペンスドラマで、毎話ごとにヒリヒリする緊迫感と先読みできない展開で注目を集めている。その最終話放送前に「占拠」シリーズに続いてプロデューサーを務めている尾上貴洋氏にインタビューを実施。キャストの印象や撮影の裏話はもちろんのこと、最終話を見る前に押さえておきたい“注目ポイント”についても語ってくれた。 【写真】解禁時は反響大…特殊詐欺組織「幻獣」のリーダー“鳳凰”を演じる藤ヶ谷太輔 ■スタイリッシュで清潔感のある二人を主人公に ――本作は「大病院占拠」「新空港占拠」チームによる新プロジェクトとなっていますが、今回のドラマを制作することになった経緯を教えてください。 「占拠」シリーズは、私がいわゆる“占拠もの”と言われる作品が好きだったので制作したのですが、もう一つ好きなジャンルとして“潜入もの”がありました。ならば、同じチームで新しい潜入ドラマができないかと考えたところから始まりました。 ――潜入するキャラクターを兄妹の設定にしたのはなぜですか? 一緒に潜入し、危険にさらされるのが家族やきょうだいといった一番守らないといけない人だと、物語により人間ドラマが生まれるではないかと思い、兄妹にしました。 ――その兄妹役として竜星涼さん、八木莉可子さんをキャスティングされた理由を教えてください。 今、闇バイトが社会問題になっていますが、このドラマも詐欺集団という裏社会を題材にしています。そうなると、どうしてもドロドロした世界を描くことになってしまうので、清潔感のある洗練された方をキャスティングしたいと思っていました。そういう意味では、竜星さんも八木さんもお芝居はもちろんのこと、清廉さがあり、とてもスタイルのいい方なので、この二人に兄妹を演じていただければ、非常にスタイリッシュな世界になると思いました。 ――撮影が進んだ今、お二人の兄妹感はいかがですか? どんどん兄妹感が増していますね。逆に、兄妹として仲良くなりすぎて本当の兄妹のような関係になっています。でも、最初からお二人の雰囲気が合っていて、ハイスペックな兄妹というのがしっくりきていたので、そこに関する心配は一切なかったです。 ■「幻獣」に関する名付けの意味 ――二人が潜入する反社会組織の「幻獣」ですが、個々の呼び名も「鳳凰」「青龍」「朱雀」「白虎」「玄武」と神様にまつわる名前になっています。その理由を教えてください。 「玄武」や「朱雀」は方角を司る神と言われているのですが、今回の「幻獣」は特殊詐欺を行う反社会組織なので、「このブロックは○○が仕切っている」という意味合いで名付けました。 ――ドラマのメインビジュアルやタイトルクレジットが、昔の香港映画を思わせるものになっているように感じました。意図するところはあったのでしょうか? 特定の国を意識したわけではないですが、犯罪組織を題材として描く上で、アジアの裏社会とその世界ならではの怖さをイメージしたところはありましたね。それらを監督や美術チームの間で共通認識として持ち、その中で竜星さん、八木さん演じるスタイリッシュな兄妹が動いていくことで、新たな化学反応が生まれればいいなと思っていました。 ■撮影現場の様子は「非常に穏やか」 ――「幻獣」メンバーに加え、詐欺チームの一員である「ハコ」チームが関わるシーンは、誰が裏切り者なのかわからないヒリヒリした空気が流れていますが、撮影現場の雰囲気はいかがですか? 現場は非常に穏やかですね。いや、ハートフルな現場と言ったほうがいいかもしれないです。というのも、竜星さんがキャストだけでなくスタッフにも気軽に話しかけてくださっていて、座長として「全てを盛り上げていこう」という気持ちが伝わってくるんですよね。あと、竜星さんだけでなく八木さんも明るい方なので、現場の空気がよどむようなことは一切ないです。それにつられて周りも明るくなるので、とてもいい現場だと思っています。 ――第6話で、藤ヶ谷太輔さん演じる鳳凰と兄妹が初めて顔を合わせました。とても緊迫感のあるシーンでしたが、撮影裏の雰囲気はいかがでしたか? それまでは「幻獣」チームと竜星さんたちのチームが撮影で一緒になることはほぼなくて。なので、対峙するシーンは異様な緊張感がありました。もちろん、それは竜星さんと藤ヶ谷さんが役としての感情をしっかり作ってくださっていたからこそのこと。でも、そうとは分かっていてもハラハラしたのを覚えています。 ――竜星さんはアクションシーンも多いですが、大変そうだったことはありますか? 竜星さんは戦隊もの(スーパー戦隊シリーズ「獣電戦隊キョウリュウジャー」)をやっていたこともあってか、アクションの勘がすばらしいんですよね。アクション監督も「この動きを、こんな一瞬で覚えるんだ」と驚いていました。体感的にアクション的な見せ方をわかっている方なので、そこはすごく助かりました。 ■「最悪だ」という決めゼリフの裏話 ――ちなみに、竜星さん演じる貴一が毎回ドラマの最後につぶやく「最悪だ」というセリフは最初から決まっていたのでしょうか? 決めゼリフありきで物語を作っているわけではないですが、毎回ピンチで終わったりするので、視聴者の方に一体感を持っていただけるような言葉があればいいなと思い、「最悪だ」というセリフを入れるようにしました。 ――第7話では、貴一の声に出さないサイレント「最悪だ」もありました。 さすがにここで「最悪だ」と言ったら、自分の素性がバレるというシーンでしたからね(笑)。でも、「やっぱり言いたいね」と竜星さんと監督で相談して、ああいう形になりました。竜星さん自身がいろいろとアイデアを出してくださる方なので、話し合いながら決めていくことはよくあります。 ■藤ヶ谷太輔“鳳凰”解禁時の反響は「とても大きかった」 ――前回の「占拠」シリーズもそうでしたが、SNSではキャストの考察が盛り上がっていました。その反響をどう捉えていましたか? 物語が進むにつれて重要なキャストが明かされていくというのは、「占拠」シリーズ以前はあまりなかったと思います。視聴者の方からしても「この役は誰が演じているんだろう」というワクワク感があったと思うので、これは新たな発明でもあったと思っています。今回のドラマに関しては、幻獣の皆さんそうなんですが、やはり藤ヶ谷太輔さんが鳳凰だとわかったときの反響がとても大きかったです。これまでの藤ヶ谷さんのイメージとは違う雰囲気や演技に驚かれた方が多かったのかもしれませんね。 ――出演者のみなさんが現場で「次は誰が来るのかな?」と話題になることは? 主演のお二人には事前に伝えていました。でも、それ以外のキャストにはわからないようにしていたので、最初は「これは誰なんですか?」と聞かれることもありましたが、そのうちに「どうせ教えてくれないんだよね」という感じになっていきました(笑)。みなさん、それらを含めて楽しんでくださっていたと思います。 ■最終話の前に「もう一度、第1話を見ていただければ」 ――物語が進むにつれ、「幻獣」メンバーの過去もどんどん明らかになっていきました。 「幻獣」チームのキャストの方々には、それぞれのバックボーンを説明した上で、とにかく怖く演じてほしいとお願いしました。最初こそ「逆らったら、一発で人生が終わる」と思わせるような集団にしたかったので、血も涙もない人たちに見えたかもしれませんが、その印象も変わってきていると思います。 ――第8話では、「幻獣」メンバーの胸にあるのは“オヤジ”と慕っていた「初代・九頭龍」を殺した相手への復讐だと判明しました。それは父親の仇を討ちたい貴一と優貴(八木)の思いと重なるところがあると思うのですが…。 貴一たち兄妹としては、復讐を誓った相手が実は自分たちと同じように別の人を憎み、復讐しようとしていたと知るわけです。そこには「幻獣」メンバーが抱く復讐心に共感するところも多少あったとは思いますが、やはり彼らがやっているのは犯罪。そこで葛藤する貴一たちの姿が描けたらいいなと思っていました。 ――残すところ、あと1話になりました。注目ポイントを教えてください。 第9話までご覧いただいた方には、全員が怪しく見えていると思います。さまざまな考察をしていただいていると思いますが、物語は、貴一と優貴の父親が殺されたところから始まっています。その真相究明のために兄妹は潜入捜査してきたので、もう一度、第1話を見ていただければと。はたして、どのような結末を迎えるのか、最後まで楽しんでいただけるとうれしいです。 ◆取材・文=馬場英美