大谷の右足首手術は米移籍にどんな影響を与えるのか?米スカウトの声は?
「今やるなら、去年のシーズンオフに手術をするべきではなかったか」 「遅くとも、WBCへの出場を見合わせると決断した2月の時点で、手術に踏み切ることは出来たのではないか」 大谷翔平が12日に右足首を手術するというニュースが流れた段階で、旧知のメジャーリーグスカウトらに連絡をすると、まずはそんな反応が返ってきた。 痛めたのは昨年の日本シリーズの時。終了後に手術を行っていれば、今年の開幕からフル出場できたのではないか、であれば、もっと正確に彼の力を評価できたのではないか、というわけだ。 そこには多分に彼らの事情があるが、昨年のオフは、11月にサムライジャパンの強化試合が組まれ、3月にはWBC(ワールドベースボールクラシック)が控えていたことから、大谷としても、様子見をせざるを得なかったのだろう。そう説明すると、「本来の優先順位は、シーズンでは?」という指摘もあったが、11月の時点でWBCをあきらめる決断は、大谷以上に周りができなかったのではないか。 一方、なぜWBCへの辞退を決めた段階で手術をしなかったのか、という見方にはもっともなところもあるが、そうすれば開幕に間に合わない。そこでも様々な人の胸にジレンマがあったはずだが、結果的には開幕直後の試合で左太もも裏の肉離れを発症し、長期離脱を迫られた。 その頃、球場で顔を合わせたあるスカウトは、「右足首を無意識のうちにかばったことで、左太ももに影響が出たんじゃないのか?」と首をかしげ、こう続けている。 「トレーナーの連中が、そんな話をしていた」 さらには、こんな指摘をしている。 「むしろ、そっちのほうが怖い」 右足首に関しては手術で完治する、ということを彼らは知っている。もちろん、リスクはゼロではないが、肉離れに関しては、大リーグでも慢性化している選手もおり、そこを懸念した。よって、「身体検査では、足首よりむしろ太ももに関して、時間をかけるかもしれない」というスカウトもいたほどだ。 ただ、その後大谷が、復帰し、問題なく走塁を行い、さらには、100マイル(160キロ)以上の球を投げているのを見て、4月に「そっちの方が怖い」と話したスカウトも、「さすがだな。若いだけに回復も早い」と受話器の向こう側で、笑い声を上げた。 そして、今回の手術そのものの決断については、「むしろ歓迎だ。キャンプにも間に合う」と好意的な声が多く、「獲得にも問題はない」とスカウトらは口を揃えている。 肉離れであっても、完治していればさほど問題はない。足首に関しては、爆弾を抱えている状態だったが、この時期に手術をしたことで、おそらくキャンプにも間に合う。これで身体的な懸念は消えた、ということか。 となると、獲得において残る不安要素は何か。あるア・リーグのスカウトは、こう口にした。 「ライバルが多くなってきた(笑)。マイナー契約で獲得出来る、ということが一つだろう」 ポスティングフィーも抑えられる見込みで、さらに大谷はマイナー契約しか結べないのだから、資金力のない球団にもチャンスが出た。当然、獲得を検討する球団は増える。 「あとは条件だ。2年ぐらい前、どこも投手としての獲得を考えていた。でも今は、獲得するためには、二刀流を容認しなければいけない、という流れになっている。お金をかけられない分、どんな起用方を提示できるか、それが彼にとっていかに魅力的かーーそういう勝負になってきた」 この点は、どの選手を獲得する上でも同じだが、本音では二刀流をやらせたいのか? と聞くと、「どうだろう」と言ってから間を置き、「どこも、ケガが怖い」と漏らした。 「足首を痛めたのも、走塁中だろう? そこで撤退するチームもあるかもしれない」 淘汰されるとしたら、リスクを取れるかどうか、また、考え方に柔軟性があるかどうかーー。そんなところで差が出るのかもしれない。 話がやや脱線したが、今回の手術に関しては、獲得の方針に影響はない、との捉え方がもっぱら。織り込み済みでもあったのだろう。太ももに関しては一抹の不安が残るが、大谷自身が、後半の活躍である程度払拭した。こうなるとあとは起用方であり、新ポスティング制度の行方であり、大谷に適用される契約の仕組みへと、各球団の検討すべき課題が、シフトしていくのかもしれない。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター) 削除▲ページトップへ