カウボーイトレンドが呼び起こすウエスタンの「美学」。存在感を増す老舗デニムブランド
ほかのファッションブランドが「カウボーイカルチャー」を一過的なトレンドとして取り入れるなか、ラングラー(Wrangler)はそのウエスタンの美学をブランドアイデンティティの中核としている。 創業約80年の歴史を持つデニムブランドのラングラーは、リー(Lee)などほかのデニムブランドとともにコントー・ブランズ(Kontoor Brand)の傘下にある。現在ラングラーが力を入れているのは、カウボーイトレンドに乗じた一連のコラボレーションだ。最新作は、ワイオミング州ジャクソンホールにあるアイコニックな牧場兼イベントスペース「ダイヤモンドクロス牧場(Diamond Cross Ranch)」とのコラボレーションである。このコレクションはデニムではなくアパレルを中心に展開され、ダイヤモンドクロス牧場の112年の歴史にインスパイアされたブランディングとデザインが特徴となっている。このコレクションのマーケティングは現在TikTokで展開されているほか、PRやインフルエンサーへの商品提供を通じて実施されている。 ラングラーでグローバルマーケティング・バイスプレジデントを務めるホリー・ウィーラー氏によると、今回のコラボレーションはダイヤモンドクロス牧場との既存の関係性から生まれたものだという。ラングラーは2023年8月に発表した2023年秋のキャンペーンを含め、数多くのキャンペーンをこの牧場で撮影してきた。ちなみにダイヤモンドクロス牧場の共同経営者であるルーク・ロング氏が彼の妻と知り合ったきっかけもラングラーの写真撮影だったと同氏は話す。
ブランドの中核にあるウエスタンという価値観
ラングラーは、自社とは異なる美学や顧客を持つブランドと意図的にコラボレーションを行うことも多い。今年1月に行われたケンドラ・スコット(Kendra Scott)とのコラボレーションでは、ラングラーは主に18~24歳の男性、そしてケンドラ・スコットは年齢層は同じだが女性といった具合に、両ブランドが互いの顧客層にアプローチすることができた。だがウィーラー氏は、ダイヤモンドクロス牧場のように顧客が重複しているブランドとのコラボレーションに価値を見出している。これは共通の価値観を生かすチャンスだと同氏は述べた。 ビヨンセのアルバム『カウボーイ・カーター(Cowboy Carter)』や、映画『バービー(原題:Barbie)』のカウボーイの衣装、ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)のアメリカーナにインスパイアされたコレクションなど、さまざまな文化的瞬間によって西洋美学への関心は高まっている。パスバイ(Pass_by)のリテールフットトラフィック・アナリストのデータによると、『カウボーイ・カーター』リリース後の4月最初の2週間で、リーバイス(Levi’s)の店舗では来客数が20%増加した。またクラーナ(Klarna)のデータによると、3月はカウボーイブーツの売上が23%増加し、フリンジジャケットなどのアイテムの売上は45%増加しているという。 「ウエスタンといえばラングラーだ。人々はラングラーを思い浮かべる」とウィーラー氏は言う。「我々はこの分野の第一人者なのだ」。