「消費されて終わったなと…」川で溺れた小中学生を助けようとした夫が死亡『美談』の報道に違和感覚えた妻は研究者の道へ『どうすれば事故を防げるのか?』
「なんであんな冷静な人が助けに行ってしまったのか」
事故はなぜ起き、どうすれば防げるのか。岡さんが選んだのは研究者の道でした。 (岡真裕美さん)「なんであんな冷静な人が助けに行ってしまったのか。ずっと謎やったし、事故のことを勉強しよう、勉強すれば何か見えてくるかもと」 岡さんは隆司さんの母校でもある大阪大学の大学院に入学し、安全な行動についての研究を始めました。レスキュー隊員などに聞き取りを行い、最新の研究に触れるなかで、人が溺れている場面に遭遇したときの対処法についても自分なりの答えを見出しました。 (岡真裕美さん)「絶対に(川に)入らないで、陸上からできる救助をする」 川は急に深くなったり流れの変化があったりと、予測できない危険があります。安易に川に入らず、ロープや浮くものを投げ入れ、救助隊などの到着を待つべきだと言います。 (岡真裕美さん)「やっぱり一番にできるのは通報、119番。海だったら118番。もし沈んでしまうところがわかったら、その場所を覚えておいて、ここで沈んだというのをチェックして、救急が来た時に『あそこらへん』と言うと探しやすくなる」
子どもに『気を付けて』は通じない
また、そもそもの事故を防ぐためには、子どもの行動の特徴を知ることが重要だと考えるようになったといいます。岡さんが今年初めて出版した本には、子どもによくある行動と注意点が詳しく解説されています。 例えば、「子どもに『気を付けて』は通じない」。具体的に、何にどう気を付けなければいけないのか、理由を説明しなければ子どもには伝わらないと言います。親子で読んでもらえるよう、フリガナを付け、漫画を織り交ぜました。 (岡真裕美さん)「子どもって好奇心が先に行ってしまうので、保護者が『飛び出したらあかんで』って言っても、『はーい』って言いながら飛び出す生き物。一緒に行動している時に、『ここはこうだから、ここが危ない』とか常々言うのがいいと思います」 岡さんは研究を続けながら年に80回ほど学校などに出向き、講演活動をしています。この日は、滋賀県の幼稚園の職員や保護者に、子どもの視野の狭さについて解説しました。小学校低学年くらいまでの子どもの視野は、大人の7割以下しかないとされています。「チャイルドビジョン」というメガネをかけて、子どもはどう見えているのか体感します。 (岡さん)「園長先生、今から私が後ろから通ります。『見えますか』と随時聞きますので、見えたら『見えた』って言ってください。…見えますか?」 (園長先生)「見えないです」 (岡さん)「では、少し前に進みます。見えますか?」 (園長先生)「あ!ちょっとこのへんに」 子どもは目の前のことしか見えていないと分かれば、声のかけ方も変わってくると言います。さらに、見通しの悪い道路の渡り方についても指摘。 (岡真裕美さん)「(子どもは)『見通しが悪い』の意味を知りません。なので、『見通しが悪いところでは…』と漠然と言うのではなくて、『この道のここでは…』というふうに普段は言ってあげるのがいいと思います」 参加した保護者は… (5歳児の保護者)「『気を付けて』とか『よく見て』とか、すぐとっさに出てしまうので、具体的にそこで止まるとか、具体的な声かけを心がけていけたらいいのかなと思いました」 (6歳児と7歳児の保護者)「車の指示器とか教えていなかったし、それはわからないなと。改めて一から子どもたちの安全と車の動きとかを教えていかないと」
「人の命も大切だけど、自分の身を守ろうという考え方につながってほしい」
危険性を知っていれば事故は防げる。自分と同じような思いをする人を1人でも減らすため、これからも啓発を続けます。 (岡真裕美さん)「人の命ってかけがえのないものだし、それぞれ生活があって、家族がある。その人が亡くなって良かったという人なんかいない。人の命も大切だけど、自分の身を守ろうという考え方に、もっとつながってほしいと思います」 2024年11月1日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特集』より)