反乱から1年 いまだに神格化されるプリゴジン氏―ロシアの極右勢力の不満
死を信じないワグネルたちの理由
午前9時を過ぎると、市民や関係者と思われる人たちがやってきて、献花をしていく。 しばらくすると軍服に「ワグネル」のワッペンを腕に付けた兵士たちが続々と集まってきた。 どうやら待ち合わせをしているらしい。 数十人が集まると、1人1人順番に献花し、銅像をじっと見つめ思いを巡らせている。 彼らは、プリゴジン氏についてどう思っているのだろうか? 質問してみるとサングラスをかけた兵士は涙で声を詰まらせながら、プリゴジン氏を「父」と呼んだ。 「父はいつも私たちの心の中に生きています。 あなた(=プリゴジン氏)が大好きで寂しいです。 私もチームも、考えなかった日はありません。そして私は常にあなたを愛しています」 トゥバ共和国出身で、刑務所で服役中にプリゴジン氏の誘いにより戦場に赴いた兵士は、こう語る。 「彼と会ったのは私にとって忘れられない日です。 私は祖国を守るという非常に重要な決断を下したのです。 この旅、戦争を経験した者として、私は間違いなくプリゴジンの記憶に敬意を表する必要があります。彼は私たちの兄のようなものだからです。そして私は彼を尊敬しています」 献花に来る人びとは、プーチン大統領が「裏切り者」扱いしたプリゴジン氏への強烈な忠誠心を隠そうとしないだけではなかった。プリゴジン氏の死を信じていないという人もいた。 ワグネルで働き、プリゴジン氏を直接知っているという男性はこう強調する 「わたしは『彼は61歳になっていただろう』などという表現を使いません。 エフゲニー・ビクトロビッチ(=プリゴジン氏)は地球上で最も賢い人の一人です。彼はそう簡単に死なないでしょう」 仮にプリゴジン氏が生きているとしたら、何を求めているのだろうか? 兵士たちは、プリゴジン氏がいなくなったことで、ロシア軍の状況は悪化したという。 ある兵士は、現在のウクライナ侵攻の是非や情勢について尋ねると用心深くこう答えた。 「諜報機関がすべてを監視しています」 彼は暗に当局に聞かれてはまずいほどの不満を抱えているということを伝えたかったのだろう。 別の兵士は監視の目を気にしつつ端的に前線の現状を批判した。 「彼がいなくなったことで全てがダメになりました。 プリゴジン氏が戦場にいた時私たちは前進しました。 しかし彼が去った途端、すべてが後退したのです」