ニコニコ動画、存続の危機?いきなり「ソニーのKADOKAWA買収」報道…双方の「思惑」とユーザーが危惧する「不安な未来」
ソニーとの相性は良いのか
カカオは2022年11月に大量保有報告書を提出している。その保有目的は「提出者と発行者との間に、長期的な協力関係を築くこと望んでいる」というものだった。 「カカオはマンガアプリ『ピッコマ』を運営しており、そのなかでKADOKAWAの作品も取り扱っています。そのため、ピッコマのコンテンツ力を高める意味でも、カカオによるKADOKAWA買収の可能性は囁かれていました。 また、カカオ以外にも、世界中でメディア関連企業を買収している中国の大手IT・ネットサービスのテンセントがやはりKADOKAWAと資本業務提携をしたので、その関係でテンセントの傘下になるのではという人もいました。いずれにせよ、安定株主比率が低く、かつてはキャッシュリッチでもあったので、M&A銘柄としてKADOKAWAを候補に挙げる声は少なくありませんでした」(同前) 大手出版社のなかでは唯一上場し、今や総合エンターテイメント企業となっているKADOKAWA。とりわけライトノベルで蓄積された膨大なIPを生かし、アニメ化やゲーム化によるロイヤリティ収入を伸ばしてきた。 その勢いゆえに、世界から《買収の標的》になっていたことがわかる。では、カカオやテンセントを差し置いて、ソニーが買収先となることについて、株主たちはどう考えているのか。前出のすずき氏が続ける。 「KADOKAWAはソニーに不足している原作部分を補う形になるので、基本的にはプラスと考えています。ソニーは今年6月に行われた株主総会で『知的財産の買収に関心』と言っていますし、すでにアニメやゲームなどで協業している部分も多く、カカオやテンセントなどと比べると相性は良いはずです」 なによりKADOKAWAは中期経営計画でグローバル展開の加速を打ち出している。すでに世界展開を果たしているソニーから学べる要素も多く、パートナーとしては申し分ないだろう。
「ニコニコ動画」が消える…?
だが一方で不安要素がないわけではない。特にKADOKAWAのサービスを享受してきたユーザーにとっては、ソニーによる買収が実現した場合、《大きな変化》を受け入れる必要が出てくるかもしれない。 「不安要素は従来から協力している企業との関係、特にソニーの競合である任天堂との関係です。KADOKAWAは、任天堂の代表的な作品のひとつ『どうぶつの森』シリーズの攻略本など、任天堂関連書籍の売り上げが結構あるはずなんですが、ソニー傘下になっても今まで通り続けられるか、という疑問はあります。『ファミ通』の雑誌やサイトなどの形も変えざるをえなくなるかもしれません。 また、SNSでも指摘されていますが、国内の表現規制の緩さもあって存続してきた『ニコニコ動画』や『ニコニコ生放送』を有する日本最大級の動画サービス『ニコニコ』と、グローバル企業であるソニーの相性はあまり良いとは言えません。『ニコニコ』が属するウェブサービス部門は、KADOKAWAのなかでも売り上げ・利益としては小さいので、ここをソニーがどう判断するかは注視が必要です」(同前) これまで独自のカルチャーを築いてきた「ニコニコ」。そうして生まれてきたコンテンツのなかには、グローバルな表現規制によって排除される可能性があるものも少なくない。 ソニーの判断によっては、在りし日の「ニコニコ動画」が消える、という可能性も十分にあり得るかもしれない。 【こちらも読む】『「ビジュよし、性格よし、もはや魅力しかない」Z世代に刺さりまくるVTuber、ビジネス的にも大注目なワケ』
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