ユーロは対ドルで等価に向かう、少なくとも10行が予想を下方修正
(ブルームバーグ): 通貨ストラテジストらは米大統領選の結果を受けてユーロ相場の見通しを相次いで撤回し、対ドルでパリティ(等価)に向かって下落すると新たに予想し始めている。
バークレイズとINGグループ、ノムラインターナショナルなど少なくとも10行が過去1週間にユーロ相場予想を下方修正した。多くの銀行が見通しを引き上げていたここ数カ月の流れが逆回転した形だ。ピクテ・ウェルス・マネジメントなどは等価を予測するが、ドイツ銀行はユーロに一層の下落リスクがあると見る。オプション取引では、トランプ次期米大統領就任後を見据え、ユーロ安を見込む賭けが人気化している。
為替市場の情勢変化は、トランプ氏が来年ホワイトハウスに返り咲けば世界貿易の制限が経済政策の主な柱になるとの観測を受けたものだ。関税賦課による欧州輸出産業への打撃が見込まれる上、域内主要圏で政治的不確実性も高まる中で投資家はユーロ売りに動いている。トランプ氏の大統領選勝利以降、ユーロはすでに3%近く値下がりし、今年の最安値に近づいている。
「ユーロにとって考えられる最悪のシナリオだ」と言うのはTDセキュリティーズの外国為替・新興国戦略部門グローバル責任者マーク・マコーミック氏。同氏は来年1月にトランプ氏が就任するまでに1ユーロ=1.03ドルまで下落すると予想し、その後は等価が「視野に入るのは間違いない」と付け加えた。
賭け市場でトランプ氏勝利が予想されていたため、先月の段階で既に市場センチメントはユーロ安方向に傾いていた。だが、共和党がホワイトハウスと上下両院を全て掌握する大勝利に近づいていることは、トランプ氏の関税政策が実施される公算が大きいことを意味する。同党のイメージカラーの赤を念頭に置いた「レッドウエーブ・シナリオ」は、ユーロの対ドル等価のリスクを高めるとマコーミック氏は述べた。
ユーロが大きな打撃を受けると見る人は他にもいる。みずほインターナショナルは来年3月までに1.01ドルに下落すると予想。INGは2026年初頭までにその水準を付けるとし、以前の1.10ドル予想から大幅な下方修正を行った。