校内研究を「フェス」にしたら変わったこと 「やらされる」から「やりたくなる」校内研究へ
やらされ感のある“研究発表のための研究”からの脱却
従来の校内研究の“当たり前”を見直し、「持続可能で幸せな校内研究のあり方」を模索してきた埼玉県蕨市立北小学校の研究発表会「北フェス」が、2023年2月に開催された。自由進度、ICT、特別支援など教職員が学びたいテーマで取り組む「グループ研究」のスタイルで、当日は公開授業に加え「北フェスタイム」と称した参観者との交流会、参加型講演会が行われた。「フェス」という名のごとく同校教職員の熱意とパワー、参観者の笑顔があふれる1日となった。同校の校内研究はどのように生まれたのか。松原好子校長、校内研究担当の花岡隼佑教諭、小林千尋教諭に取材した。 【写真を見る】「皆さんが思う『幸せな校内研究』ってなんですか?」への回答 ここは、蕨市立北小学校の体育館。同校の教職員が3年にわたって取り組んできた研究発表会「北フェス」のメイン会場だ。入り口には「皆さんが思う『幸せな校内研究』ってなんですか?」と問いかけるボードが設置されている。記入された回答は会場の一角に掲示され、参観者同士で共有できるようになっている。 体育館内にはBGMが流れ、教職員が生けたというミニフラワーアレンジメントが置かれたテーブルには、各研究グループの紀要を読み取るQRコード、児童の学習記録などが展示。お茶とお菓子のコーナーも設置され、参観者は和やかな雰囲気の中で展示を見たり、交流を楽しんだりすることができる。 校内で栽培した植物から作られたアロマスプレーの体験コーナーや、研究副主任の花岡隼佑氏によるユニークな「研究の小言」の掲示など、遊び心や創意工夫も随所に見られる。この日を待ち望んでいた教職員の熱意とパワーが、会場全体を明るく楽しい空気で包み込んでいるように見えた。 「従来の校内研究を否定したかったわけでは決してなくて。でも、『今までどおりのことはやりたくないよね』と。ここからのスタートでした」と話すのは、蕨市立北小学校校長の松原好子氏だ。 「本校は、2021年度から2023年度の3年間にわたり、蕨市教育委員会から研究委嘱を受けました。『主体的に活動する児童の育成~ICT等の教育ツールの効果的な活用~』を研究主題に『さあ何をやろう』と考えたとき、これまでのような『教科を特定して一部の教員が授業を行い、ほかの教員は裏方として支える』といった、いわゆる“研究発表のための研究”から脱却しようと。教職員全員を巻き込む形で取り組みたいという思いがありました」 2021年度から学力向上推進担当、研究副主任を務める花岡氏は、こう続ける。 「職員室は多様な教職員が集まる場なのに、1つの教科にしぼった一律一斉スタイルの校内研究だと、スタート地点でモチベーションギャップが生まれてしまいます。やらされ感がなく、教職員一人ひとりの興味関心を出発点とし、モチベーション高く取り組める校内研究を実現させたいと提案しました」 そこで、研究の“進め方”に主眼をおき、教職員それぞれが学びたいテーマでグループ研究を行うことに。1年目は「ICT」「学び合い」「学級経営&係&宿題」「自由進度学習」「体育」「遊び&PA」と6つのグループに分かれ、研究が始まった。ところが、早くも壁にぶちあたったという。 「全員の合意のもとでスタートしたのですが、初めての試みということもあり、グループ内でのチームワークがとれず、『これは校内研究と言えるのか』という意見が出始めたのです」と、花岡氏。当時はコロナ禍で、対面の機会が限られていたことも影響したという。