テレビではもっといじってもらっていい――May J.が“アナ雪バッシング”を経て手に入れた「強さ」
まるで罪を犯したかのような扱いを受けた
100の好意的なコメントがあっても、たった一つのネガティブなコメントで気持ちがつぶれて、その日が台無しになってしまうこともあった。「言葉の暴力で受けた傷は治りづらい」とMay J.は言う。それはトラウマとなり、思い出した瞬間に歌えなくなる後遺症をも引き起こした。今でも、本番前には極度の緊張と闘っている。 「常にポジティブな言葉を浴びるようにはしているんですけど、でもやっぱり本番でステージに立つと、闇に引き込まれそうになります。ギリギリのところで立っている、という感じ。すごい緊張感で、毎回本当に死にそうです。スタッフたちが、本当に、いつも祈るような思いで私のことを見ているのがわかるんです、『今日はうまく、楽しく歌えますように』って」
アナ雪バッシングでは、家族も傷を負った。特に悲嘆にくれる父親の姿を見るのは、非常につらかったという。 「まるで何か罪を犯したかのような扱いを受ける娘を見て、父はすごく悲しんだし、今でも不満を持っていると思います。でも、『もう芸能界はやめなさい』とは言われなかったですね。ずっと支えてくれています」 シンガーを、表舞台に立つことをやめてしまおうと思ったことはなかったのだろうか。 「思ったことないです! だって悔しくないですか、こんなことでやめたら。絶対に自分をやめさせない。だってこれは、自分の夢だから」 極度の緊張にもさいなまれたが、その原因となったバッシングをはねのけて、“ありのままで”生きることを選んだ。原動力となったのは、歌への強い思い。ひとりのシンガーとしてのMay J.を、家族、ファン、スタッフ、そして彼女自身が愛する姿勢は揺るがなかった。 「それでも嫌いって言う人はいると思う、でも、好きって言ってくれる人もいるから。その人たちのために歌い続ければいいと思ってます」
誤解されることが多いんですよね
シンガーの実像は、世間からは見えづらいものだ。楽曲を歌い上げる真剣な姿からは、実際の明るいキャラクターは連想しづらい。あふれるネガティブコメントと、真顔で歌う姿が組み合わさって、高慢なイメージが独り歩きしてしまった。 また当時、歌以外の自己表現に自信がなく、バラエティー番組に出演しても、なかなか思うように振る舞うことができなかった。 「私、そもそも顔のつくりがキツいじゃないですか。ボキャブラリーも少なくて、誤解されることが多いんですよね。テレビに出るとき、芸人さんと違って、歌手はあまりいじっちゃいけないみたいな、腫れ物のような扱いを受けているなと思ってるんですけど、私としては、もっといじってもらっていい(笑)。そのほうが話しやすいし、キャラが出せると思うから」