米ドル/円「1ドル148円より円高」は当面なさそう?…米ドル/円は「1ドル151.9円」目指して一段の円安か【国際金融アナリストが考察】
米ドル/円相場は「1ドル151円台」に近づき神経質な展開に
米ドル/円の週間値幅は、先週まで2週連続で2円未満にとどまりしたが、1月には3~4円に拡大することもありました。徐々に、2023年11月と2022年10月に記録したこのところの米ドル高値「151円台」に近付くなかで神経質になる結果、値幅も縮小していると考えられます。 ただし、大幅な日米金利差などを背景に1週間で3~4円程度の値幅に拡大する可能性は常に抱えています。つまり、当面148円台が米ドル下限になるなら、いつでも151円台の米ドル高値更新が射程に入った状況にあるということではないでしょうか。 では、そういったなかで、日本の通貨当局による「円安阻止介入」の見通しはどう考えたらよいか。 米ドル/円は、足元で過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)を2割以上上回っています。こんなふうに5年MAを2割以上上回ったのは、1990年以降ではこれまで4回ありました。そして、そのうち2回は米ドル売り・円買い介入が行われました。一方で、2015年と2023年の2回は介入は行われませんでした(図表5参照)。 介入が行われなかった2回に共通したのは、株高傾向にあったということでした。 以上から考えられるのは、株高傾向のなかでは円安への不満も目立ちにくくなり、通貨当局も円安阻止への緊張感が緩む可能性があるということです。 そういった意味では、最近のように日本株の「怒涛の株高」が展開するなかでは、この間の米ドル高値である151円台更新前にも、円安阻止の介入を急ぐ可能性は今のところ低いと考えられます(図表6参照)。
今週の注目点…米景気とインフレ再燃に注目
冒頭でも述べたように、先週は米インフレ指標の上ぶれが大いに注目を集める結果となりました。 一方、景気指標では、小売売上高が予想を大きく下回る結果となり、米金利低下、米ドル売りで反応する場面もありましたが、結果的にはそれも限定的にとどまりました。 米景気の行方を考えるうえで、個人消費の動向は最大の鍵を握る要因ですが、1回の結果のみでは判断しかねるといった反応だったと考えられます。 先週の主な米経済指標の結果は以下の通りです。 〈13日〉 1月CPI総合……前回3.4%、予想2.9%、結果3.1% 同コア……前回3.9%、予想3.7%、結果3.9% 〈15日〉 1月小売売上高……前回0.6%、予想0.1%、結果-0.8% 2月NY連銀製造業景気指数……前回-43.7、予想-10、結果-2.4 〈16日〉 1月PPI総合……前回1%、予想0.6%、結果0.9% 同コア……前回1.8%、予想1.7%、結果2% 先週の動きを受けて、予想以上に強い米景気がいつまで続くかといったことに加え、それが米インフレ再燃をもたらしかねなくなってきたということも、マーケットの新たなテーマに追加されました。 この結果、早期利下げ期待の後退にとどまらず、再利上げの可能性も注目されはじめたようです。 そういったなかで、米金利上昇、それに伴う日米金利差米ドル優位がどこまで拡大するかが、米ドル/円にとっては最大のテーマとなります。よって、151.9円程度の米ドル高値をにらむ神経質な展開が続くのではないでしょうか。 以上を踏まえると、今週の米ドル/円の予想レンジは148~151.5円中心で想定します。 吉田 恒 マネックス証券 チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長 ※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
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