シント=トロイデン"五輪トリオ"の現在地。藤田譲瑠チマ、山本理仁、小久保玲央ブライアンが語る「新シーズン&A代表」
「スペイン戦も勝てる可能性はあったと思います。でも、なんだろう......。チャンスがあったかと聞かれるというほどあったわけじゃなく、流れの中で決定機になったのは(細谷)真大のゴールがオフサイドになったやつと、後半に真大が相手からボールを奪ってGKと1対1になったやつくらいで......。 ほとんどの時間帯は、自分たちがボールを持っていても持たされていたというか、相手は『別に今は取りにいこうとしてないよ』的な印象があった。相手ボールのときも本当に奪い返すのが大変で......。縦パスとかも簡単に入れられるなどレベルの高さを痛感しました」 スペイン戦については、山本も藤田も触れたように1点ビハインドの前半40分にペナルティエリアの中でボールを受けた細谷が振り向きざまのシュートでネットを揺らしたものの、VAR介入の末、足の一部がわずかに出ていたとしてオフサイドと判定された。あれがゴールと認められていればと思ったサッカーファンも多いだろう。 「でも、足が出ていたので、ルール上はオフサイド。あの判定に『なんでだよ!』みたいな怒りはないですし、スペインはいいチームでした。もちろん、多少はショックもありましたけどね(苦笑)」 ■9月の最終予選にも選ばれたらいいなと GK小久保はパリ五輪最終予選を兼ねたU-23アジア杯から好守でチームの窮地を幾度も救ってきた。本大会でもスペインとの準々決勝こそ3失点を喫したものの、グループリーグでは3戦無失点とベスト8進出の立役者となった。 チームで唯一、全4試合にフル出場し、大会中はその堅守ぶりからSNS上で"国防ブライアン"という呼称が生まれるなど話題になった。 「それはネットで見ました。そう言ってもらえるのは、やっぱりうれしいですね」 ただ、昨季まで5年間所属していたベンフィカではトップチームでの出場は一度もなく、五輪にかけていた思いも人一倍だっただけに敗戦のショックも大きかったようだ。8月14日にはシント=トロイデンで約1ヵ月遅れの入団会見に臨み、こう話している。 「この2年半積み上げてきたものがスペインには通じず、悔しい気持ちです。ただ、今はその差をどう埋めるか考えるよりも、毎日練習するしかないかなと。スペイン戦の失点シーンもまだ見返していないですし、今は後ろを振り返るよりも、前を向いていきたいと思っています」 9月には2026年北中米W杯に向けたアジア最終予選がスタートする。近年、A代表では絶対的な守護神が不在で、五輪で評価を高めた小久保を推す声も増している。小久保自身すぐにでもプレーしたい気持ちは強いとする。 「A代表でプレーしたい気持ちは以前から持っていました。そのためにシント=トロイデンでいいプレーをして、アピールしていきたい。将来はW杯にも出たいですし、9月や10月の活動に選ばれたらいいなとも思っています」 一方、小久保と共に代表入りの期待の声が多い藤田は慎重というか、「まずはクラブでいいプレーをすること。その後に代表はついてくるもの」と語っている。 「自分の考えとしてはクラブで活躍しなければ、代表はないと思うし、代表に入るためにクラブでサッカーするわけでもない。 なので、まずはシント=トロイデンで自分の納得するプレーをすることが先。その上で、必要な選手として選ばれたら喜んで行こうとは思っています」 もちろん、山本もA代表を狙うひとりだ。 「今後はそれ(A代表)しかないんで。そのためにはシント=トロイデンで見せるしかないんで頑張ります」 新たな目標に向けて動き出した3人に注目したい。 取材・文・撮影/栗原正夫 写真/(C)STVV アフロ