「あなたの飲酒が他人の健康を蝕む」アルコールの“意外な悪影響”が明らかに
ニュージーランドのマッセイ大学らの研究グループは、アルコール関連の障害や早死によって失われた健康寿命の年数を推定したところ、2018年にはアルコールが原因で7万8277年分もの健康寿命が失われたことを明らかにしました。この内容について中路医師に伺いました。 【イラスト解説】アルコールで肝臓の細胞が破壊されて発症する「肝硬変」の初期症状8選 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
研究グループが発表した内容とは?
編集部: ニュージーランドのマッセイ大学らの研究グループが発表した内容を教えてください。 中路先生: 今回発表された研究は、ニュージーランドのマッセイ大学らの研究グループが実施したもので、研究成果は学術誌「Addiction」に掲載されています。 研究グループは、ニュージーランドの入院記録やACC(事故補償公社)、調査データ、FASD(胎児性アルコール・スペクトラム障害)に関連する新しい推定値、国際的なアルコール寄与率を用いて研究を実施しました。 その結果、2018年にはアルコールによる他人への害によって、7万8277年の健康寿命が失われたと研究で明らかにしました。内訳を見ると、主な原因はFASDで90.3%を占める結果になりました。次いで多くなったのは交通事故で6.3%、対人暴力で3.4%でした。 また、先住民であるマオリ族は、より高い割合で影響を受けていることも判明したことに加え、飲酒者自身への害によって失われた健康寿命は6万174年分であることもわかりました。 この結果から、アルコールによる他人への害の方が、飲酒者自身への害よりも大きくなったことが明らかになりました。 研究グループは、今回得られた結果について「FASDによる障害は、ニュージーランドにおけるアルコールによる他者への危害の主な原因であると思われる。 FASDを考慮すると、ニュージーランドでは他者への危害の健康負担は飲酒者への危害よりも大きく、民族差は他者への危害の不公平を示している。 危害の負担を定量化することは、効果的なアルコール政策を実施する価値となり、あらゆる危害を含むべきである」と結論づけています。