かつては「選挙運動」も? 販売効果は健在 45年迎えたカー・オブ・ザ・イヤー【けいざい百景】
その年の最も優れた乗用車を決める「日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」。1980年の第1回から今年で45回を数え、40年以上にわたり日本の自動車産業の一年を映し出してきた。自動車ファンはもちろん一般ユーザーも注目。受賞のために選考委員への「選挙運動」が過熱した時期もあった。往事の絶大な影響力には及ばないものの、テレビCMなどを通じた販売への効果は依然健在だ。(時事通信経済部 木元大翔) 【写真】日本カー・オブ・ザ・イヤーで最優秀車に選ばれたホンダ・フリード ◆宣伝効果と士気向上 「1位とそれ以下では全く違う」。自動車メーカー関係者はCOTYについてこう力説する。COTYは自動車ジャーナリストらが選考委員を務め、一次選考で絞られた10車種を、最終2次選考の投票でランク付けする。今年は59人の選考委員に1位=10点、2位=4点、3位=2点の投票権がそれぞれ与えられた。 ベストカーに選ばれれば宣伝効果は大きく、販売の現場で売り文句に活用でき、士気向上にもつながる。今年は220点を獲得したホンダの「フリード」がミニバンとして初めて選出された。2位だったマツダの3列SUV(スポーツ用多目的車)「CX―80」は196点と接戦。結果発表の会場では「どちらに転んでもおかしくなかった」との声も上がった。しかし、2位以下では「車が好きな人しか関心を払わない」(関係者)のが実情で、一般消費者への宣伝効果は見劣りする。マツダには悔しい結果となった。 COTYは一番売れた車や性能の良い車を選出するものではなく、その年に「目立った車」を選ぶ賞だ。話題性のある車種は開催前から「有力な車」として業界で強く認識されるという。 日産自動車と三菱自動車が共同開発した軽の電気自動車(EV)「サクラ/eKクロスEV」は2022年のベストカーに輝いた。当初から「話題をかっさらうだろう」(メーカー関係者)との強い印象を残していた。選考委員から太鼓判を押された形となり、サクラは日本で最も売れたEVとなっている。 22年に日産は、SUV「エクストレイル」(5位)とスポーツ車「フェアレディZ」(7位)の計3車種が10ベストカーに選ばれ、「技術の日産」の底力を示した。しかし、24年には一次選考対象の31車種にすら新車を送り出せず、経営不振を象徴する結果となった。