マンガ「あさきゆめみし」で描かれた母の愛 花散里の容姿も… 源氏物語との〝違い〟の楽しみ方は
大河ドラマ「光る君へ」。源氏物語を書いた紫式部が主人公ですが、すべてを読み切ったという人はどれくらいいるでしょう。一方、マンガで内容を知っている人も多いのではないでしょうか。平安文学を愛する編集者・たらればさんが、それぞれの現代語訳や、マンガの違いを味わう楽しみを紹介してくれました。(withnews編集部・水野梓) 【画像】「光る君へ」たらればさんの長文ポスト 放送の1年間「情緒がもつのか…」
価値観の揺らぎに触れることで…
水野梓・withnews編集長:スペースのリスナーさんから、源氏物語を描いた大和和紀さんのマンガ『あさきゆめみし』について、「実家から引き上げてきました。たらればさんはいつごろ読みましたか?」と質問がありました。 たらればさん:『あさきゆめみし』は大学生の頃に読みました。大和和紀先生は紫式部に匹敵する天才だと思っています。 実は、まず与謝野晶子訳の源氏物語に挑戦したら、「これは…読めない…」と、だいぶ最初の方で挫折したんです。「帚木(ははきぎ)」ぐらいでダメだとなったんですね。 その後、あさきゆめみしを読んで全体的な流れやそれぞれの登場人物の特徴をつかんでから、円地文子(えんちふみこ)訳を読んだら、すらすら読めたんですよ。 あさきゆめみしにハマった方は、その流れで(誰かの現代語訳で)源氏物語を読むと、違いが楽しめるので楽しいですよ。紫式部がこう書いたことを、大和先生はこう解釈したんだ…と違いが出て、より面白いです。 水野:以前、漫画家のおかざき真里さんと、たらればさんと、源氏物語に登場する姫君の人気アンケート企画をやりましたね。 【関連記事】「あさきゆめみし」に隠された…同業者も気づかなかったトリック https://withnews.jp/article/f0220211001qq000000000000000W02c11001qq000024267A たらればさん:そこでは花散里が人気でしたよねえ。みなさん、花散里と聞くとふっくらした姫君をイメージすると思いますが、原文ではやせていて、「容姿がいまいち」となっている。当時と今では美人の概念が違うからですね。 水野:平安時代はふっくらした女性が素敵とされていたんですね。 たらればさん:時代、時代で表現や解釈が変わる、それを前提として読むのが古典の醍醐味です。 昔は「だめだ」と言われていたことが、今は「いい」とされる、そういう価値観の揺らぎに触れることで、自分の姿が見えてくることもあります。10代なのか30代なのか、読んだ年代で作品の印象が変わるのも、古典の魅力です。