タワマン、続く建設ラッシュ 1年間で48棟完成 修繕費増を懸念し新築を規制する自治体も
対処法の一つが積立金の増額だが、入居者は高齢になり収入が減る。初めの計画より大きく膨らんだ積立金を払えず手放す人も出てくるとみられる。ある専門家は「立地が悪ければ買い手がつくのは難しく、人が住まないままになる可能性もある」とみる。
費用がまかなえず修繕できなければ建物の劣化は加速する。タワマンの歴史は浅く、長期管理の経験がない。手法や技術の確立を急ぐ必要がある。(山口暢彦)
■神戸市、〝廃虚化〟回避へ条例改正 政府は多数決要件緩和へ
タワーマンションの〝廃虚化〟を避けようと、自治体が動き始めた。神戸市は令和2年に改正条例を施行し、繁華街のある三宮地域に新たな住宅をつくることを禁止。周辺では住宅の延べ床面積に関する制限を厳しくして、実質的にタワマンをつくれないようにした。
「数十年すると(タワマンは)廃墟化する可能性がある」。久元喜造市長は昨年10月の記者会見でこう指摘。「人口が減り大量の空き家が存在する中、(タワマンをつくり続けることは)住宅政策として正しいとは思えない」と話した。
根底には、タワマンの住民が高齢化すれば高い管理費や修繕積立金を負担できなくなることなどへの懸念がある。
この施策には、地域からも「今まで高いマンションが建っても、商店街に人がたくさん来るようになるといった効果はなかった」(三宮の不動産会社関係者)と賛成の声が上がっている。
一方、政府は、タワマン特有の管理の課題を解決すべく動いている。
タワマンは場合によっては千人単位の各戸の所有者がいて、修繕などに関する管理組合の決議も、無関心な人が多ければ連絡すらつかず合意を取り付けるのが難しい。
東京のタワマンに住む公認会計士の男性は「カーシェアリング導入や子供の遊び場づくりを決めたくても意見をまとめられない」と語る。
政府は、区分所有法を改正し、決議のハードルを下げてこうした課題にも対処できるようにしたい考えだ。
同法では、管理組合の集会の決議には原則、全ての所有者の多数決が必要。欠席し、委任状などで賛意の表明をしていない人は実質的に「反対」とみなされる。