駅頭のスクリーンに中国のプロパガンダが…「台湾有事は日本有事」と語るプロデューサーが手がける台湾ドラマ 高橋一生&水川あさみも出演
「台湾有事はイコール日本有事――。その認識は日本人も受け入れざるを得ない事実だと思います」 【写真をみる】台湾からも「美男美女」が出演
台湾で来春に放送が予定されているテレビドラマ「零日攻撃 ZERO DAY」が世界の耳目を集めている。中国人民解放軍による台湾侵攻や、それを後押しする台湾人民への浸透工作をリアルに描く、全10話からなる作品だ。
“侵攻”は相当程度進んでいる
総額2億3000万台湾ドル(約10億円)もの制作費を投じた大作のプロデューサーを務める、鄭心媚(チェンシンメイ)氏(48)に話を聞いた。 「台湾周辺で中国軍の演習が相次いでいるように、私たちが感じる軍事的威圧はエスカレートする一方。これらは目に見える脅威ですが、私は水面下での“侵攻”は、相当程度進んでいると考えています」 鄭氏は台湾が中国から最も攻撃を受けやすい時期を、「総統選挙の投票日から新総統の就任日までの期間」と指摘する。台湾では今年1月13日に総統選挙が実施され、5月20日に“台湾独立派”とされる、民進党の頼清徳氏(65)が新総統に就任したばかりだ。 「ネット用語で“ソフトウェアの脆弱(ぜいじゃく)性が発見されてから修正されるまでの期間”をゼロデイと言います。悪意のあるハッカーによる攻撃を最も受けやすく、それと重ねて台湾が最も攻撃を受けやすい時期としてZERO DAYというタイトルにしました」 淡々と語る鄭氏は、7月に17分の予告編が公開されるまで、多くの台湾人には脅威への危機感が乏しいと感じていたと振り返る。 「台湾人の誰もが心の底に秘めていた“台湾有事は避けられない”“中国はいずれ攻めてくる”という潜在的な恐怖が表面化してきたと思うのです。私たちがパンドラの箱を開けたことで“周囲は危機で囲まれている”という厳しい現実を再認識したのでしょう」
駅頭のスクリーンに中国のプロパガンダが……
鄭氏を含む、複数の監督が演出を担うアンソロジースタイル。第1話〈戰爭或和平(War or Peace)〉では、中国軍が台湾への上陸に踏み切るまでが描かれる。 総統選挙の後、中国は台湾周辺における軍事演習を拡大。そんな中、中国軍の偵察機Y―8が台湾東部の太平洋上で消息を絶った。中国政府は不明機の捜索と救助を名目に、南シナ海と東シナ海に大規模な海軍と空軍戦力を投入。これは中国の宣戦布告なのか……。 企画の立ち上げに際して、鄭氏はおよそ2年にわたって安全保障や軍事、ITなどの専門家への取材を重ねた。読み込んだ論文の数は数十本に達するという。 「戦闘シーンはもとより、中国による虚偽情報の流布や選挙への介入、台湾軍兵士への浸透工作、内通者らによる暴動など、政府と軍の協力を得て現実にあり得るストーリー展開と映像を追求したつもりです。駅頭のスクリーンがジャックされて中国のプロパガンダが流されるシーンが出てきますが、これは台北を中心に実際に起こったサイバー攻撃をもとにしています」 鄭氏には、とくにこだわったシーンがあるという。 「生い茂るススキの中に身を隠す中国軍兵士らが立ち上がって一斉に姿を現す場面。隠密裏に進む中国の台湾侵攻の実情を象徴させるのが狙いです。ススキは台湾を象徴する植物ですし」 俳優陣には、日本から高橋一生(43)と水川あさみ(41)が参加。日本語、台湾華語や英語の3カ国語のセリフを流ちょうにこなしている。 「シリアスなテーマではありますが、視聴者には、あくまでエンターテインメント作品として楽しんでほしい。もしも習近平政権が許すなら、中国本土の人々にも見てほしいですね」
「週刊新潮」2024年12月5日号 掲載
新潮社